Japanese Enhanced Graphics Adapter

JEGA（Japanese Enhanced Graphics Adapter）

JEGAは、AX規格パソコンで日本語を表示するために開発されたハードウェアシステムです。アスキーとチップス・アンド・テクノロジーズが共同で開発し、チップス・アンド・テクノロジーズが提供するチップを基に、各AXパソコンメーカーが実際のハードウェアを製造しました。

JEGAの技術的な特徴

JEGAは、EGA（Enhanced Graphics Adapter）の上位互換として設計されていますが、いくつかの重要な拡張機能を持っています。主な特徴は以下の通りです。

高解像度表示: 640x480ピクセルの解像度をサポートし、4:3のアスペクト比で1:1のピクセル表示を実現しました。これは、後に普及したVGAの640x480モードとはハードウェア的な互換性はありません。
日本語表示: シフトJISコードを直接表示できる漢字ROMを搭載し、日本語テキストの表示を容易にしました。
チップ構成: チップス・アンド・テクノロジーズのSuper EGAビデオチップP82C435とアスキーのJEGAチップV6367を組み合わせて使用します。V6367はテキストモード時にCPUとビデオチップ間のデータ転送を制御します。

JEGAの動作原理

テキストモードでは、CPUがテキストVRAMに書き込むと、V6367がそのデータをビデオチップのグラフィックVRAMに転送します。ビデオチップ自体は常にグラフィックモードで動作しています。このアーキテクチャは、当時のVESA規格が存在しなかったため、特定メーカーの製品の画面モードに依存せざるを得ず、互換性の問題を生じさせました。

基本仕様

JEGAはEGAのハードウェアを拡張した設計で、テキストVRAMはセグメントアドレスB800から始まる32KBのメモリアドレス空間に割り当てられます。ここにシフトJISコードを書き込むことで、対応する日本語文字が表示されます。グラフィックモードもEGAと同様、4つのプレーン（赤、緑、青、輝度）を持ち、セグメントアドレスA000から始まるメモリアドレス空間に、一度に1つのプレーンを割り当ててアクセスします。

カラーパレットもEGAと同様に、64色から16色を選択して表示色を指定します。

表示システムの種類

JEGAには、AX-1とAX-2の2種類の表示システムが存在します。

AX-1: テキスト画面とグラフィック画面を排他的に表示します。
AX-2: テキスト画面とグラフィック画面を重ねて表示できます。Super EGAチップとビデオメモリを二重に搭載しており、ハードウェアに直接アクセスすれば、テキスト画面を2画面、またはグラフィック画面を2画面構成することも可能です。

表示モード

JEGAは、EGAの表示モードに加え、以下のモードを標準でサポートしています。

テキスト：80字×25行、640×480ピクセル、8ページ（EGAのモード3hを上書き）
テキスト：80字×25行、640×480ピクセル、8ページ、グラフィック画面と重ね表示（EGAのモード2hを上書き）
グラフィック：640×480ピクセル、1ページ
グラフィック：640×480ピクセル、1ページ、テキスト画面と重ね表示

これらのモードは、CRT BIOSで日本語モードに設定することで有効になります。システムリセット時には英語モードで起動し、EGAとの互換性を確保します。

AX-VGA

後継のAX-VGA/HもJEGAの方式を踏襲し、VGAグラフィックモードに日本語チップが書き込む仕組みを採用しました。VGAの規格化により、VGA対応のビデオチップであれば使用可能になりました。AX-VGA/Sは、この日本語チップの動作をソフトウェアでエミュレートしたものです。DOS/V|DOS_Vに似た仕組みですが、日本語ドライバとメモリマネージャが一体であったため、汎用性に欠けました。また、AX-VGA/Sは仮想86モードでエミュレーションを行っていたため、386以上のCPUを必要としました。

まとめ

JEGAは、当時の技術的な制約の中で、日本語表示を可能にするための画期的なシステムでした。特に、AX-2におけるテキストとグラフィックの重ね合わせ表示は、高度な表現力を実現し、後のグラフィック環境の発展に貢献しました。

参考文献

JEGA-LSI V6367 データブック. アスキー
AXテクニカルレポート. 翔泳社. (1988). ISBN 491567312X
山崎美保 青島純一 (1990). AXでプログラミング あなたにも使えるAX入門. ダイヤモンド社. ISBN 4478990123

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