JavaScriptエンジン

JavaScriptエンジンとは

JavaScriptエンジンは、JavaScriptで記述されたコードをコンピュータが理解し実行できるように変換するプログラムです。初期のJavaScriptエンジンは、コードを一行ずつ解釈して実行するインタプリタ方式でしたが、現代のエンジンは、Just-In-Time (JIT) コンパイルという技術を用いています。JITコンパイルでは、実行時にコードを機械語に変換することで、インタプリタよりも高速な実行が可能になります。

JavaScriptエンジンは、主にウェブブラウザに搭載されており、Webページの動的な処理を担っています。ブラウザでは、JavaScriptエンジンはDOM（Document Object Model）を介してレンダリングエンジンと連携し、ウェブページの表示や操作を実現しています。しかし、JavaScriptエンジンの用途はブラウザに限定されず、例えば、サーバーサイドJavaScriptの実行環境であるNode.jsでは、V8エンジンがコアコンポーネントとして使用されています。

ECMAScriptは、JavaScriptの標準規格です。そのため、ECMAScriptエンジンという言葉は、JavaScriptエンジンの別名として使われることがあります。

JavaScriptエンジンの歴史

最初のJavaScriptエンジンは、1995年にブレンダン・アイクによってNetscape Navigator向けに開発されました。これは、JavaScriptという新しい言語のための初期的なインタプリタでした。その後、Googleが開発したV8エンジンが登場したことで、JavaScriptエンジンの歴史は新たな段階に入りました。V8は2008年にChromeの一部としてリリースされ、JITコンパイルを採用したことで、従来のエンジンを大幅に上回るパフォーマンスを実現しました。

V8の登場は、他のブラウザベンダーにも大きな影響を与え、各社は自社のエンジンを刷新する必要に迫られました。Appleは、Safari向けにNitroエンジンを開発し、以前のエンジンよりも30%高速な実行速度を実現しました。Mozillaは、Nitroの一部を参考にSpiderMonkeyを改良し、Operaは、Carakanという新しいエンジンを導入し、場合によっては従来の2倍の速度を実現しました。

2017年以降、主要なブラウザがWebAssemblyに対応し、パフォーマンスが要求される処理では、事前にコンパイルされた実行ファイルを使用できるようになりました。JavaScriptエンジンは、通常のJavaScriptコードと同じサンドボックス内でWebAssemblyのコードを実行します。

主なJavaScriptエンジン

以下に、代表的なJavaScriptエンジンをいくつか紹介します。

V8: Googleによって開発された、最も広く使用されているJavaScriptエンジンです。Google ChromeをはじめとするChromiumベースのブラウザ、Node.js、CEF、Electronなどのフレームワークで使用されています。
SpiderMonkey: Mozillaによって開発され、Firefoxとその派生ブラウザで使用されています。また、GNOME Shellの拡張機能にも使用されています。
JavaScriptCore: AppleがSafari向けに開発したエンジンであり、WebKitベースのブラウザでも使用されています。KDEのKJSがベースとなっています。
Chakra: Microsoft Edgeで使用されていたエンジンです。以前のInternet Explorerのエンジンからフォークされましたが、EdgeがChromiumベースに変更されたことで、V8に移行しました。Internet Explorerでは引き続きChakraが使用されています。
* Hermes: Facebookによって開発されたエンジンで、React Nativeを使用するAndroidアプリ向けに最適化されています。

これらのエンジンは、それぞれ異なる特徴を持ち、様々な環境でJavaScriptの実行を支えています。JavaScriptエンジンの進化は、ウェブ技術の発展に不可欠な要素であり、これからもその動向が注目されます。

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