Jurassic Park: The Game

『ジュラシック・パーク: ザ・ゲーム』は、スティーヴン・スピルバーグ監督による映画第一作『ジュラシック・パーク』の世界観を深く掘り下げたグラフィックアドベンチャーゲームです。ユニバーサル・ピクチャーズの公式ライセンスのもと、ストーリーテリングに定評のあるTelltale Gamesによって開発され、2011年にMicrosoft Windows、Macintosh、PlayStation 3、Xbox 360などのプラットフォーム向けにリリースされました。本作はユニバーサル・ピクチャーズが開発に直接関与していることから、『ジュラシック・パーク』シリーズの公式設定（カノン）の一部として位置づけられており、後の映画シリーズ『ジュラシック・ワールド』や『ジュラシック・ワールド/炎の王国』においても、本作で描かれたイスラ・ヌブラル島の歴史やシボ山に関する設定が引用されています。

ゲームは三人称視点で進行し、物語は映画第一作でデニス・ネドリーによるシステム停止が引き起こした混乱が発生したまさにその時、そしてその直後にイスラ・ヌブラル島で起こった、映画では描かれなかった出来事を中心に展開します。プレイヤーは複数の視点を通して、パーク崩壊の知られざる側面や、島に取り残された人々のサバイバルを体験することになります。ストーリーは全4つのエピソードで構成されています。

エピソード 1: The Intruder (侵入者)
エピソード 2: The Cavalry (救援)
エピソード 3: The Depths (深淵)
エピソード 4: The Survivors (生存者)

物語を彩る登場人物

本作には、映画でお馴染みのキャラクターと並行して、ゲーム独自の魅力的な人物たちが多数登場します。主要な人物として挙げられるのは、ジュラシック・パークに常駐する獣医ゲイリー・ハーディングと、その娘ジェシカ（ジェス）・ハーディング親子です。彼らは映画にも同名の獣医が登場しますが、ゲーム版では新たな視点の主人公となります。

また、物語の重要な鍵を握るのが、バイオシン・コーポレーション社に雇われた女性傭兵、ニマ・クルスです。彼女は、ネドリーが盗んだ恐竜の胚が入ったシェービングクリーム缶を奪還する任務で島に潜入しますが、実はイスラ・ヌブラル島の先住民であるツーンシ族の出身であり、島の強制移住に関して複雑な過去を抱えています。特に、インジェン社の命令で自らの父を殺害した同郷の傭兵オスカー・モラレスとの関係は、物語に深い葛藤をもたらします。ニマの運命は、ゲームの最終盤におけるプレイヤーの選択によって変化するマルチエンディングが用意されています。

インジェン社の遺伝子学者ローラ・ソーキンも重要なキャラクターです。彼女はハモンドが危険視し安楽死を命じた恐竜、特に夜行性の肉食恐竜トロオドンを秘密裏に研究していました。動物の権利運動に傾倒していた過去を持ち、恐竜への独自の倫理観を持っています。彼女の研究助手であるデービッド・バンクスと共に、パーク崩壊後も島で孤立します。

その他にも、バイオシン社の社員マイルス・チャドウィック（ニマと同行するがディロフォサウルスに殺される）、事件後に行方不明者捜索に派遣されたインジェン社の傭兵チーム（リーダーのビリー・ヨーダー、オスカーを含むブラボーチームの面々）や、インジェン社本部の人間、島施設の職員など、様々な立場の人物が登場し、それぞれの思惑や運命が交錯します。

パークに潜む恐竜と舞台

本作では、映画で猛威を振るったティラノサウルス・レックスやヴェロキラプトルなどが、映画と同一個体あるいは新たな個体として登場します。特にヴェロキラプトルは、サイトBから新たに運ばれた獰猛な群れがクアランティン・ペンス（隔離施設）に収容されていたという設定が掘り下げられます。映画では描かれなかった生物として、夜行性で毒を持つトロオドンがゲームの主要な脅威として登場し、噛まれた対象に幻覚や麻痺を引き起こし、最終的には死に至らしめるという恐ろしい生態が描かれます。また、海生爬虫類のティロサウルスも重要な場面で登場します。

舞台となるイスラ・ヌブラル島は、映画で見慣れたビジターセンターやイーストドックに加え、ゲーム独自の様々なロケーションが登場します。ソーキン博士の野外実験室（フィールドラボ）や、危険な恐竜が収容されていたクアランティン・ペンス、建設途中で放棄されたジェットコースター施設「ボーンシェーカー」、そして島全体に張り巡らされたメンテナンストンネルなど、パークの知られざる施設が多数描かれます。これらの場所は単なる背景ではなく、物語の展開やパズル要素に深く関わってきます。

島の自然環境も詳細に描かれ、特に島の最高峰である火山シボ山は、地熱発電の源であると同時に、先住民であるツーンシ族にとって神聖な場所であったという歴史が明かされます。このシボ山に関する設定は、後の映画シリーズでも重要な要素となります。ゲームのクライマックスは、島の北部にある大型船用の港、ノースドックで繰り広げられます。

『ジュラシック・パーク: ザ・ゲーム』は、原作映画の緊張感とスリルを保ちつつ、映画では語られなかったパーク崩壊の裏側や、新たな登場人物、恐竜、場所に関する詳細な設定を描き出すことで、『ジュラシック・パーク』の世界観を公式に拡張した意欲作と言えるでしょう。

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