K-19 (映画)

映画『K-19』：冷戦下の原子力潜水艦事故を描く

『K-19』（原題: K-19: The Widowmaker）は、2002年に公開された潜水艦を題材にした映画です。キャスリン・ビグローが監督を務め、ハリソン・フォード、リーアム・ニーソンといった実力派俳優が出演しています。本作は、1961年7月4日に北海グリーンランド沖で発生したソ連のホテル級原子力潜水艦K-19の事故を基に製作されました。

ストーリー

1961年7月、ソ連海軍の最新鋭原子力潜水艦K-19は、グリーンランド沖での演習に参加するため出港します。艦長に任命されたのは、アレクセイ・ボストリコフ。彼は部下たちから必ずしも好意的に思われていませんでした。出航前の点検で、ボストリコフは勤務中に泥酔していた原子炉室長を解任し、若き原子炉士官ヴァディムを代わりに任命します。

K-19の出航は、まるで不吉な予兆に満ちていました。進水式ではシャンパンのボトルが割れず、軍医は事故で亡くなります。交代でやってきた軍医も老齢で船酔いを訴える始末。副長のミハイル・ポレーニンは、ボストリコフと度々対立し、艦内の緊張が高まっていきます。

核ミサイルの発射実験が成功した直後、原子炉で事故が発生。1次冷却水漏れが発生し、原子炉は過熱状態に陥ります。修理が必要ですが、漏洩箇所は高濃度の放射線に汚染されており、近づけば命の保証はありません。ボストリコフはポレーニンらに対策を命じますが、K-19には安全装置がなく、無線アンテナも故障で使用不能。外部との通信も途絶えていました。

原子炉士官パベルの提案により、魚雷を分解して得たパイプを繋ぎ合わせ、炉心に水を送り込んで冷却するという危険な案が採用されます。しかし、艦内に配備されていたのは簡易的な化学防護服のみ。放射線防護服は在庫切れで使用できませんでした。放射線を遮断できない状況下での作業は、決死隊による特攻作戦を意味します。ポレーニンは部下たちに「これで防げる」と嘘をつき、作業員を鼓舞します。原子炉担当士官8名が、2人1組で過酷な作業に挑むことになります。

まず、パベルとアナトリーが原子炉に入ります。空気抜き弁を切断し、パイプを溶接する作業が始まりましたが、10分後、2人は重度の被曝で瀕死の状態となって戻ってきます。ボストリコフは軍医に2人を放射能から遠ざけるよう命じますが、ポレーニンは部下の動揺を抑えるため、軍医に協力を促します。大学で原子力を学んだヴァディムは恐怖のあまり出動を拒否しますが、代わりにゴレロフ機関長が最後の力を振り絞って冷却水を炉心に送り込みます。しかし、ゴレロフも被曝し、鼻から出血するなど、急性放射線障害の症状が現れました。

部下たちの自己犠牲的な行動に心を打たれたボストリコフ。決死の作業により、原子炉は一時的に危機を脱しますが、溶接箇所から再び水漏れが発生し、艦内は放射能汚染されていきます。K-19を発見したアメリカ海軍が救助を申し出るも、ボストリコフはこれを拒否。部下思いのポレーニンは反発します。

ボストリコフに不満を持つ部下たちは、ポレーニンを担ぎ上げて反乱を企て、ボストリコフを解任しようとしますが、ポレーニンは逆に彼らを鎮圧し、拘束します。原子炉の過熱が再発し、ヴァディムは意を決して作業に向かいます。ポレーニンに救われたボストリコフは、部下たちに危機的状況を説明し、協力を求めます。原子炉が爆発すれば、第三次世界大戦に発展しかねない状況を回避できるのは、自分たちだけだと訴えます。

ボストリコフの演説に感銘を受けた乗組員たちは団結し、彼と共に戦うことを決意します。原子炉から戻らないヴァディムを案じ、ボストリコフは防護服も着けずに原子炉へ向かい、瀕死のヴァディムを救出します。その後、K-19は友軍の潜水艦に発見され、乗組員たちは救助されます。

しかし、原子炉に入った作業員8名は重度の被曝により1週間以内に死亡。その後2年間で28人が後を追いました。生存者たちも放射能障害に苦しみ、ソ連政府は事故の事実を隠蔽しました。事故から28年後、退役したボストリコフは、ポレーニンや生存者たちと共に、犠牲者の墓参りに訪れ、彼らの勇気と犠牲を称えるのでした。

映画『K-19』は、冷戦下における原子力潜水艦事故の悲劇と、それに立ち向かった人々の勇気を描いた作品です。史実に基づきながらも、ドラマチックな脚色が加えられ、観る者に深い感動を与えます。

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