K2-18b

K2-18b：生命の兆候を探る太陽系外惑星

K2-18bは、[しし座]]の方向に約124光年離れた位置にある赤色矮星K2-18の周囲を公転する太陽系外惑星です。ハビタブルゾーン内に位置する惑星として初めて、大気中から水蒸気が検出されたことで注目を集めています。さらに、地球上で生命由来で生成されるジメチルスルフィド]の存在可能性が指摘され、その後の観測で実際に検出されたものの、[[生命の存在を示す兆候と見なすには慎重な意見もあります。

発見の経緯

K2-18bは、NASAのケプラー宇宙望遠鏡によるK2ミッションで2015年に発見されました。ケプラー宇宙望遠鏡は、トランジット法という手法を用いて、惑星が恒星の前を通過する際に生じるわずかな光度の変化を観測することで惑星を検出します。主星K2-18が太陽よりも小型で暗い赤色矮星であるため、発見当初から大気観測の可能性が期待されていました。当初、K2-18系までの距離は111 ± 13 光年とされていましたが、後のガイア計画の観測により124.0 ± 0.3 光年に修正されています。

K2-18bの特徴

観測データから、K2-18bの質量は地球の8.63倍、半径は2.711倍であり、地球と海王星の中間のサイズを持つ惑星と考えられています。表面重力は海王星と同程度です。K2-18bは主星から約2100万km離れた軌道を約33日で公転しており、潮汐固定されていると考えられています。スピッツァー宇宙望遠鏡の観測により、この軌道がK2-18のハビタブルゾーン内に位置することが判明しました。表面温度は約265K（-8℃）と推定されています。

大気観測と水蒸気の検出

K2-18bは、主星の光度が低いため、発見当初から大気観測がしやすいとされていました。2019年、複数の研究グループがハッブル宇宙望遠鏡のデータを用いて、K2-18bの大気中から水蒸気の存在を示す痕跡を発見しました。これは、ハビタブルゾーン内の惑星としては初の事例です。水蒸気の割合は不明確ですが、研究グループは20-50%に及ぶ可能性を示唆しています。水蒸気の存在は、地球のような水循環が存在する可能性を示唆するものとして、大きな注目を集めました。

しかし、K2-18bは地球の数倍の質量を持つため、スーパーアースや地球型惑星と報じられる一方で、海王星よりも小型のガス惑星であるサブ・ネプチューンに分類されています。表面が岩石で構成されているか、厚い大気を持つガス惑星なのかは不明であり、現時点ではハビタブル惑星と断定することはできません。主星が活発な赤色矮星であるため、強い放射線の影響を受けている可能性も高く、地球上の生命が存在できる環境とは大きく異なると考えられています。

[ジメチルスルフィド]の検出と議論

2023年、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による観測で、K2-18bの大気中からメタン、二酸化炭素とともに、ジメチルスルフィド（DMS）が存在する可能性が発表されました。DMSは地球上では生物由来でしか生成されない有機硫黄化合物であり、海洋環境の植物プランクトンから放出されることが知られています。そのため、DMSは潜在的なバイオシグネチャーとして注目されました。しかし、この分析結果は確定的なものではなく、さらなる検証が必要とされました。

そして[2025年]]、研究チームはジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による観測から、K2-18bの大気中にDMSもしくはジメチルジスルフィド]が存在することを確認しました。大気中のDMSの量は[[地球の数千倍と推定されており、継続的な生成機構の存在を示唆しています。この発表は「太陽系外における最も強力な生命活動の兆候」と報道されましたが、科学者からは慎重な意見も出ています。DMSが非生物由来でも生成される可能性が指摘されており、生命の存在を示す明確な証拠とは言えないという見解もあります。

今後の展望

K2-18bは、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡やARIELといった次世代望遠鏡による観測対象として期待されています。これらの望遠鏡は、太陽系外惑星の大気組成をより詳細に調べることが可能です。K2-18bの研究は、惑星の形成過程や生命の存在可能性を探る上で重要な手がかりとなると期待されています。

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