K2-72

K2-72星系

K2-72（別名EPIC 206209135、2MASS J22182923-0936444）は、太陽から約227光年（70パーセク）離れた、みずがめ座の方向にある恒星です。スペクトル分類M2.7Vに属する低温の赤色矮星であり、太陽よりも小さく暗い恒星です。この恒星系は、地球とほぼ同程度のサイズの4つの太陽系外惑星を持つことが判明しており、特に注目すべき点として、これらの惑星の1つが、液体の水が存在しうる生命居住可能領域、すなわちハビタブルゾーン内に位置しているとされています。

名称と発見

K2-72という名称は、NASAのケプラー宇宙望遠鏡によるK2ミッション（ケプラーの拡張ミッション）において、惑星候補が確認され、カタログに登録された72番目の恒星であることに由来します。K2ミッションは、恒星の手前を惑星が通過する際に生じるわずかな明るさの低下（トランジット）を検出することで惑星を発見する「トランジット法」を用いて天体を観測しました。地球から見て惑星が恒星を横切ることで起こるこの現象は、惑星の存在を示す重要な証拠となります。K2-72星系の惑星は、このトランジット法によって発見されました。

発見された4つの惑星には、内側から順にK2-72b, K2-72c, K2-72d, K2-72eという名称が与えられています。これは、中心恒星の符号に、発見順を示すアルファベットを付加する慣習に基づいています。

惑星のサイズについては、発見当初、すべて地球よりも小さいと推定されていました。しかし、2017年にMartinezやCourtney Dressingらによって恒星に関するデータが再解析された結果、K2-72恒星自体のサイズが従来の予測より大きいことが明らかになり、それに伴って、公転する惑星もすべて地球より大きいサイズであることが判明しました。それでもなお、これらの惑星は岩石質の「地球型惑星」である可能性が高いと考えられています。

恒星の特徴

K2-72恒星自体は、前述のようにM型（赤色矮星）に分類されます。物理的な特徴は分析によって若干異なりますが、例えばDressingらの分析では、太陽質量の約27%、太陽半径の約33%と見積もられています。一方、Martinezらの分析では、より大きな値である太陽質量・半径の約36%という結果が示されています。

光度は太陽の約0.013%から0.015%と極めて低く、表面温度は約3360～3370ケルビンです。これは、太陽の表面温度である約5778ケルビンと比較すると大幅に低い値です。恒星の正確な年齢は、現在のところ明らかになっていません。参考として、太陽の年齢は約46億年と推定されています。

地球から見たK2-72の見かけの明るさを示す等級は15.309です。これは非常に暗いため、肉眼で観測することは不可能であり、観測には専用の望遠鏡が必要となります。

惑星系

K2-72の周囲には、合計4つの惑星が確認されています。これらすべてが、岩石質の地球型惑星である可能性が高いと考えられています。

これらの惑星のうち、K2-72cは恒星に近い軌道を公転しており、その位置はハビタブルゾーンの内側の境界に近いと考えられています。そして最も重要な点として、惑星K2-72eが、現在の分析に基づくと恒星のハビタブルゾーン内に位置していることが判明しています。ハビタブルゾーン内の惑星は、理論上、表面に液体の水が存在しうる温度環境にあるため、生命の存在の可能性という観点から特に大きな関心が寄せられています。

K2-72星系は、地球から比較的近い距離にある低温の赤色矮星の周りに複数の地球型惑星、特にハビタブルゾーン内の惑星を持つ系として、太陽系外惑星の研究において重要な観測対象の一つとなっています。

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