KC-10 (航空機)

KC-10 エクステンダー

KC-10は、アメリカのマクドネル・ダグラス社によって設計された空中給油及び輸送機で、愛称は「エクステンダー」です。1970年代に始まったこのプロジェクトは、アメリカ空軍のニーズを受けて請け負われ、1980年に初飛行を果たしました。この機体は、米軍が運用する他の給油機とは異なり、輸送能力も備えています。

開発の背景

アメリカ空軍は1950年代から空中給油機KC-135を利用してきましたが、戦術上大型の機体が必要であると認識され始めました。この流れの一環として、1976年にはATCA計画が始動し、様々な機種が比較検討されました。その結果、DC-10が選定され、この機体を改修しKC-10として運用が開始されました。KC-10の設計には、燃料を供給しながら同時に貨物や人員を輸送できるという目的が反映されています。

開発と配備

1979年に初号機が完成し、1980年から本格的な生産が開始されました。最終的に60機が製造され、主にニュージャージー州のマクガイア空軍基地やカリフォルニア州のトラヴィス空軍基地に配備されました。1990年に生産が終了するまで、KC-10は輸送及び空中給油任務に携わり、湾岸戦争をはじめとした大規模な軍事作戦に参加しました。

機体の構造

KC-10の基本設計はDC-10-30CFに基づいており、兵器関連の改設計が施されています。機体下部にタンクを配置し、給油装置を装備するなどの工夫がされています。最大で160トンの燃料を搭載可能で、約77トンの貨物を運ぶことができます。搭載人員は最大で77名です。

貨物扉は機体の左側にのみ存在し、給油中に機体を安定させるため、独自の運用体制を有しています。また、空中給油機としてのKC-10は、フライングブーム方式だけでなく、プローブアンドドローグ方式を用いた給油も行えます。

空中給油装置

KC-10は、主にフライングブーム方式で給油を行いますが、副次的にプローブアンドドローグ方式も使用可能です。これにより、米軍の異なる部門の航空機に対して効率的に給油支援を行うことができます。給油オペレーターは専用の座席に座って作業を行うため、作業効率も高まっています。

現状と将来の計画

2020年時点では、60機中58機が現役でしたが、国防予算では全機の退役が計画されています。また、次期空中給油機としてKC-X計画が進行中であり、KC-10の後継機を準備中です。

オランダ空軍のKDC-10

オランダ空軍は、元々は民間機であったDC-10-30CFを改造してKDC-10を運用しています。この機体は空中給油機能を省略し、コスト削減を図った型式です。KDC-10は、他の機体と同様に重要な役割を果たしていますが、将来的にはA330 MRTTに代替される予定です。

結論

KC-10エクステンダーは、アメリカ空軍の中で重要な役割を果たしてきた空中給油機であり、その能力は今後も多数の任務で引き続き求められることが予想されます。搭載機能と運用性能のバランスに優れたこの機体は、今後の空中給油機のスタンダードを築く存在であり続けるでしょう。

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