KDA-6 (航空機)

KDA-6: 川崎の偵察機

KDA-6は、川崎造船所飛行機工場（後の川崎航空機工業）が大日本帝国陸軍に向けて試作した偵察機です。この機体名の「KDA」は「Kawasaki Dockyard, Army」の略称に由来しています。

開発背景と設計

KDA-6の開発は1930年（昭和5年）11月に始まりました。当時、川崎は新型の偵察機を陸軍向けに自主的に計画していました。このプロジェクトでは、ドイツから招かれていたリヒャルト・フォークト技師が設計主務者を務め、土井武夫技師がその補佐をしました。

KDA-6は、複座戦闘機に匹敵する運動性と、偵察機に必要な航続性を両立させることを目的としました。設計は、九二式戦闘機（KDA-5）の開発経験を基に、複座化と大型化が施されています。機体の設計はほぼ全金属で構成されており、一部には羽布張りの翼も採用されています。また、降着装置は固定脚であり、全体として合理的なデザインが施されています。

試作機の完成と評価

設計は1931年（昭和6年）8月に完了し、同年10月には試作機が完成しました。その後、試作機は川崎側の飛行試験を行った後、1932年（昭和7年）2月に立川で陸軍による審査を受けました。審査結果は良好でしたが、当時の陸軍は特定のメーカーに対して固定された製造機種の割当を行っていたため、KDA-6は制式採用されることはありませんでした。興味深いことに、陸軍は審査時にKDA-6を八八式改良偵察機と称し、八八式偵察機（KDA-2）の改良版として扱っていました。

改造とその後の活躍

試作機はその後、朝日新聞社に払い下げられ、通信機として使用されることになりました。着陸事故を起こした際には、2度目の改造を受け、エンジンの換装や密閉風防の追加、降着装置および燃料タンクの設計変更が行われました。改造を終えたKDA-6は、1934年（昭和9年）8月下旬に朝日新聞社に再納入された際に、「A-6型通信機」と改名されました。その後、A-6は原稿の輸送などに使用されたほか、1934年9月6日には華北訪問高速連絡飛行に使用され、近畿地方から中国の地域を結ぶ1,910kmを9時間47分で飛行しました。

設計の影響

KDA-6の設計は、後の九三式単発軽爆撃機（KDA-7）の基礎にもなっており、当時の航空機技術の進展に寄与した重要な機体です。

諸元

KDA-6の詳細な諸元については、具体的なデータは記載されていませんが、試作機としての役割やその特徴的なデザインは評価され続けています。

• ---

出典

• - 野沢正『日本航空機総集 川崎篇』出版協同社、1960年、68-72頁。
• - 野原茂『日本陸海軍試作／計画機 1924〜45』グリーンアロー出版社、1999年、22頁。ISBN 978-4-7663-3292-6。

もう一度検索