KDDI山口衛星通信センター

KDDI山口衛星通信センターは、山口県山口市仁保中郷に位置する、KDDIが運営する日本最大の衛星通信施設です。この施設は、国際通信用の衛星であるインテルサットやインマルサットとの通信を主な目的としており、約20基のパラボラアンテナが設置されています。

概要

センター内には、ヨーロッパ、インド洋、アメリカ、太平洋といった広範囲な地域との国際通信を可能にするアンテナが多数配置されています。インテルサットは、主に国際通信を担い、インマルサットは船舶通信やインターネット接続などの移動体通信をサポートしています。また、NHKワールドTVやNHKワールド・プレミアムといった国際放送も、このセンターから世界に向けて発信されています。

特に目を引くのは、直径34mの巨大なパラボラアンテナで、これは日本最大級のものです。さらに、KDDIから国立天文台に譲渡された直径32mの電波望遠鏡も存在し、山口大学と協力して宇宙電波観測が行われています。

施設内には、1982年に開設された見学施設「KDDIパラボラ館」があり、衛星通信の仕組みや歴史について学ぶことができます。ただし、セキュリティ上の理由から、関係者以外の立ち入りはパラボラ館のみに制限されています。

テレビ放送への影響

山口市内には、KDDI山口衛星通信センターの他にも、スカパーJSATや自治体衛星通信機構など、複数の衛星通信施設が存在します。これらの施設から発信される電波の影響により、電波法に基づき、山口市内ではこれらの施設の運用を妨げる電波を出すことが禁止されています。このため、テレビ放送に関しては、親局である大平山の出力が制限され、山口市内では鴻ノ峰中継局からの電波やケーブルテレビの利用が一般的となっています。

歴史

KDDI山口衛星通信センターは、旧国際電信電話（KDD）時代の1969年5月に「KDD山口衛星通信所」として開設されました。これは、ヨーロッパやアフリカ、西アジア向けの通信を可能にするため、インド洋上の静止衛星との交信に適した場所に設置されたものです。当時、KDDは茨城にも衛星通信施設を所有していましたが、太平洋上の衛星向けであったため、インド洋上の衛星との通信を補完するために山口に新たな施設が建設されました。

この施設は、長年にわたり国際通信を支え、通信業界の再編を経て、2002年に現在の名称に変更されました。KDDIは2006年度末に茨城の衛星通信センターを閉鎖し、山口に機能を統合したことで、このセンターの重要性はさらに増しました。

開設からの歩み

1967年にインド洋地域のインテルサット地球局としての建設が始まり、1969年5月に山口衛星通信所が開所しました。同年7月には、国際通信用第1アンテナが運用を開始し、英国皇太子の立太子礼やアポロ11号の月面着陸といった歴史的な出来事を世界に中継しました。

その後も、数々の国際的なイベントのテレビ中継に貢献し、1978年にはインド洋海域の船舶との通信サービスを開始しました。1980年代にはインテルサットの追跡、管制業務を開始し、1982年にはパラボラ館がオープンしました。

1990年代には、海事衛星通信サービスや航空衛星電話サービスを開始し、1997年にはKDDと日本高速通信が合併、2000年にはKDDIが誕生しました。

2000年代に入ると、施設の改修や設備の増強が進められ、2007年には茨城通信センターの閉鎖に伴い、国内唯一の国際衛星通信拠点となりました。現在も施設の拡張は続けられ、2019年には開所50周年を迎えました。

この施設は、技術の進歩とともに、衛星通信の最前線で重要な役割を果たし続けています。

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