KOI-456.04

KOI-456.04

KOI-456.04は、地球から約3,140光年離れた、こと座の方向にある恒星ケプラー160の周囲を公転していると考えられている天体です。現時点ではその存在が85％の確率で確実視されているものの、正式な太陽系外惑星としてはまだ確定しておらず、「惑星候補」という位置づけになっています。このため、発見当初はKepler object of interest（KOI）としての識別名であるKOI-456.04が主に使われましたが、ケプラー160系の4番目の惑星となる可能性から、ケプラー160eという名称で呼ばれることもあります。

発見までの経緯

KOI-456.04が候補として特定されるに至るまでには、ケプラー160系の先行研究が大きく関わっています。この恒星系では、既に2014年にケプラー宇宙望遠鏡による観測で、ケプラー160bとケプラー160cという二つの惑星が発見されていました。しかし、内側の惑星であるケプラー160cの公転周期にわずかながら変化が見られたことから、これはまだ見つかっていない第三の惑星の重力の影響によるものだと推測されました。

この予測に基づいた詳細な解析が進められ、2020年には、ケプラー160cの軌道変動の原因となっていた惑星ケプラー160dの存在が確認されました。そして、この同じ研究の中で、惑星が恒星の手前を通過（トランジット）する際に発生する恒星の光のわずかな減光というデータの中から、新たに別の惑星候補の信号が検出されたのです。これがKOI-456.04として特定され、その後の分析で惑星である確率が高いと判断されました。

特徴と潜在的可能性

KOI-456.04が特に注目されるのは、その軌道と推定される物理的特徴にあります。候補天体は、主星であるケプラー160の周りを約378日かけて一周しています。この公転周期は、地球が太陽を約365日で回る周期と非常に近い値です。

さらに重要なのは、この軌道が主星ケプラー160の「ハビタブルゾーン」内、すなわち、惑星の表面に液体の水が存在しうる温度条件が満たされる領域に位置していることです。これにより、KOI-456.04は潜在的に生命が存在しうる環境を持つ可能性があると期待されています。

もしKOI-456.04が惑星として確認された場合、その半径は地球の約2倍よりも小さいと推定されています。また、主星ケプラー160から受け取る光や熱の量は、地球が太陽から受ける量の約93%程度と見積もられており、これも地球に極めて近い値です。仮にこの惑星に大気が存在し、適度な温室効果が働いているとすれば、表面温度は約5℃程度になると考えられています。これは地球の平均表面温度（約15℃）よりも少し低いですが、生命の存在には十分適した温度範囲と言えます。

「地球と太陽の鏡像」

主星のケプラー160が、恒星としてのタイプや温度、質量など、太陽に非常に似た特徴を持つ恒星であること、そして、候補であるKOI-456.04が、地球に近い公転周期でハビタブルゾーン内を公転していることから、ドイツのマックス・プランク太陽系研究所（MPS）の研究者たちは、ケプラー160とKOI-456.04の関係性を「地球と太陽の鏡像（A mirror image of Earth and Sun）」と表現し、その類似性を強調しています。この表現は、この恒星系が太陽系と驚くほど似た構成を持つ可能性を示唆しており、地球外生命探査の観点から強い関心を呼んでいます。

今後の展望

現時点ではまだ「惑星候補」であるKOI-456.04ですが、その存在をより確実なものとし、さらに詳しい情報を得るための計画も進んでいます。2026年の打ち上げが予定されている次世代の太陽系外惑星探査衛星PLATOによる観測の対象として、KOI-456.04が提案されています。PLATOによる高精度な観測が実現すれば、KOI-456.04が本当に惑星であるかどうかを高い信頼度で確認できるとともに、その物理的な性質や大気の有無など、さらに詳細な情報を得られる可能性があります。もし惑星であることが確定し、生命の存在に適した条件が確認されれば、将来的な探査の重要なターゲットとなるでしょう。

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