Kh-25 (ミサイル)

Kh-25 空対地ミサイル

Kh-25（フール・ドヴァーッツァチ・ピャーチ、ロシア語: Х-25、NATOコードネーム: AS-10 Karen）は、1960年代末から1970年代にかけてソビエト連邦（現ロシア）で開発された第二世代の戦術空対地ミサイルです。Kh-23/66 Grom（フロム、NATOコードネーム: AS-7 Kerry）の改良型とされ、外観もよく似ています。

開発の背景

Kh-25の開発は、初期の空対地ミサイルの運用における課題を克服するために始まりました。ソ連初の戦術航空機用空対地ミサイルであったKh-66は、発射時に航空機が急降下する必要があり、運用に困難が伴いました。また、電波指令誘導式のKh-23も誘導装置の問題により、実用化までに時間を要しました。

これらの問題を解決するため、1971年にセミアクティブレーザーシーカーを搭載したKh-25の開発がスタートしました。当初、西側諸国ではKh-23Lとして知られていました。1974年に試験が開始され、1975年から量産に入りました。

並行して、パッシブシーカーを用いた対レーダーミサイル仕様の開発も進められました。この計画から、長射程のKh-31対レーダーミサイルも誕生しています。

設計の特徴

Kh-25は、Kh-23の後期型とよく似た外観を持ち、十字型のカナード翼と主翼を備えています。モジュール式の設計が採用されており、誘導方式の異なる様々な派生型が存在します。

対レーダーミサイル仕様であるKh-25MPは、異なる周波数を受信する2種類のホーミングヘッドを備えています。

各型

Kh-25 (Kh-23L): 原型となるレーザー誘導式。
Kh-25ML: セミアクティブレーザー誘導式。二重弾頭により厚いコンクリート壁の貫通が可能。
Kh-25MA: アクティブレーダー誘導式。
Kh-25MAE: Kh-25MAの改良型。Kaバンドシーカーを搭載。
Kh-25MS: GPSまたはGLONASS衛星誘導装置を搭載。
Kh-25MSE: Kh-25MSの輸出型。
Kh-25MT: TV誘導式。
Kh-25MTP: イメージングIR誘導式。
Kh-25R/Kh-25MR: 電波指令誘導式。
Kh-27 (AS-12 Kegler): 対レーダーミサイルの原型。
Kh-25MP (AS-12 Kegler): モジュール式対レーダーミサイル。
Kh-25MPU (AS-12 Kegler): Kh-25MPの改良型。

運用

Kh-25は、1973年から1975年にかけてソ連空軍でMiG-23、MiG-27、Su-17Mに搭載され運用が開始されました。その後、MiG-21、MiG-29、Su-17/20/22シリーズ、Su-24、Su-25、Su-27などの航空機や、Ka-50のようなヘリコプターでも使用されています。Kh-25MPは、MiG-23/27、Su-17/22、Su-24、Su-25に搭載可能です。

性能

全長: 3.83m (MR), 4.255m (ML)
直径: 27.5cm
翼幅: 82cm
弾頭: 140kg HE (MR), 89.6kg HE (ML)
誘導方式: 電波指令 (MR), セミアクティブレーザー (ML)
射程: 10km (MR), 20km (ML)

運用国

ベラルーシ
カザフスタン
ロシア
ウクライナ
ウズベキスタン

類似のミサイル

Kh-23M (AS-7 Kerry)
Kh-29 (AS-14 Kedge)
Kh-59 (AS-13 Kingbolt)
Kh-38
AGM-65 マーベリック
* AGM-45

Kh-25は、そのモジュール性と多様な派生型により、現在でも広く使用されている戦術空対地ミサイルです。後継機種であるKh-38シリーズが登場していますが、Kh-25も依然として重要な役割を担っています。

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