L盤アワー

L盤アワー

「L盤アワー」は、日本のラジオ史において、洋楽を深く紹介した草分け的な番組の一つとして記憶されています。ラジオ東京、後に東京放送（現TBSラジオ）の制作で、1954年10月6日から1969年4月13日までの長きにわたり、毎週水曜日の夜10時30分から放送されていました。この番組を単独で提供していたのは、レコード会社である日本コロムビアでした。

「L盤」とは何か

番組名の由来となっている「L盤」とは、当時の日本コロムビアが発売していた特定のレコード規格を指します。日本コロムビアは、1967年6月末までアメリカ合衆国のコロムビア・レコード（現ソニー・ミュージックエンタテインメント）と提携関係にありました。この提携を通じて入手した米コロムビア社の音源をはじめ、その他の海外レーベルから供給された楽曲も、日本国内でレコード化する際に独自の規格番号を付与していました。その際、特に洋楽に対して「Limited（リミテッド）」の頭文字である「L」で始まる規格番号を付けていたのです。SP盤の時代には「L」で始まる番号が使われ、後の17cmシングル盤（ドーナツ盤）においては「LL」で始まる番号が付与されました。これらの「L」または「LL」で始まる規格番号を持つレコードは、総称として「L盤」と呼ばれていました。「L盤アワー」は、まさにこの「L盤」として新たに発売された新譜に焦点を当て、リスナーに紹介することを使命とした番組でした。

番組内容とその変遷

番組開始当初は、その名の通り、日本コロムビアからリリースされる最新の「L盤」を中心とした洋楽専門の音楽番組として構成されていました。歴代のディスクジョッキー（DJ）が、楽曲の紹介や解説を行いました。番組を彩ったDJには、薗冷子さんを皮切りに、大平透さん、弘田三枝子さん、竹山昭子さんといった著名な方々、そして一谷伸江さん、番組末期を担当したばばこういちさんが名を連ねています。薗冷子さんがDJを務めていた時期には、番組の冒頭で「…北から南まで、全国民間放送27局をネットしてお送りしております『L盤アワー』。（中略）さあ、あなたのリクエスト曲を、お送りできるでしょうか?　おしゃべりはこのくらいにして…さっそく今週のL盤、参りましょう!!」といった、全国のリスナーに語りかけるような挨拶が行われていました。

また、番組のテーマ曲として、パーシー・フェイス楽団による「恋をして（In Love）」が長年使用され、多くのリスナーに親しまれました。

1960年代後半に入ると、番組の内容に変化が見られます。それまでの洋楽中心という構成に加え、CBSレーベルを通じて発売された日本のポップス、いわゆる和製ポップスも紹介されるようになります。例えば、エミー・ジャクソンさん、ジャッキー吉川とブルー・コメッツ、ヴィレッジ・シンガーズといった当時の人気アーティストの楽曲も取り上げられました。番組末期、ばばこういちさんが担当していた時期には、さらにその傾向が進み、洋楽・邦楽を問わず、当時の若者層が関心を寄せるポップス全般に関する音楽情報を提供する番組へと性格を変えていきました。

当時のラジオ音楽番組と「L盤アワー」

「L盤アワー」が放送されていた時期は、日本のラジオにおいて洋楽やポップスを紹介する番組が隆盛を迎えていた時代でもあります。他の放送局でも、文化放送の「S盤アワー」やニッポン放送の「P盤アワー」といった、レコード会社の提供による同様のコンセプトを持つ人気番組が存在していました。これらの番組は、当時の日本の音楽ファンにとって、海外の最新ヒット曲やアーティスト情報を得るための貴重な情報源であり、音楽文化の普及に大きな役割を果たしました。「L盤アワー」もまた、日本コロムビアが擁する豊富な洋楽ラインナップを背景に、多くのリスナーに世界の音楽を届け続けました。

約15年間にわたる放送期間を通じて、「L盤アワー」は時代の音楽トレンドを取り入れながら変化し、提供元である日本コロムビアの主力商品を効果的に紹介するとともに、リスナーに新たな音楽との出会いを提供し続けた、日本のラジオ史に残る音楽番組と言えるでしょう。

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