LABYRINTH (来生たかおのアルバム)

『LABYRINTH』（ラビリンス）は、1984年に来生たかおが発表した企画アルバムです。このアルバムは、来生たかおにとって初のデジタルレコーディング作品であり、ジャケットや歌詞カードには横尾忠則のアートワークが使用されています。

概要

このアルバムは、来生たかおが他のアーティストに提供した楽曲のカバーと、オリジナル曲「今のままでいて」で構成されています。特筆すべきは、フランスの巨匠ポール・モーリアが全編曲を手がけている点です。

ポール・モーリアは、通常、日本のアーティストからのプロデュース依頼を断っていましたが、来生たかおの楽曲に感銘を受け、自身の編曲との親和性を感じたことから、異例のプロデュースを引き受けました。彼は来生たかおの音楽を「一見シンプルだが、人々の心を惹きつける明快でロマンティックな音楽」と評し、そのメロディーとボーカルのオリジナリティに敬意を表しました。ポール・モーリアが邦楽のボーカルアルバムを全編プロデュースしたのは、このアルバムが唯一の例となっています。

レコーディングは、ポール・モーリアが普段から使用していたパリの“スタジオ・ダム”で行われました。来生たかお自身も渡仏し、現地でボーカル録音に臨んでいます。ポール・モーリアは、来生作品の魅力を最大限に引き出すために、ストリングスを重視し、ヴァイオリンによるコントル・シャン（対旋律）を効果的に使用しました。一方、リズムアレンジは現代的なものを取り入れ、東西の音楽が見事に融合したサウンドを作り上げています。

1984年には、ポール・モーリアの来日公演にゲスト出演し、アルバム収録曲を披露しました。この模様は、TBS系の音楽番組『ザ・ベストテン』で生中継され、大きな話題を呼びました。また、アルバム収録曲を基調とした映像作品『LABYRINTH TAKAO KISUGI with PAUL MAURIAT』も制作され、LD、VHS、VHDでリリースされています。

収録曲について

アルバムには、「逢瀬」「今のままでいて」「めぐり逢い」「あしたの風」「デイ・ブレイク」「さよならのエチュード」「白いラビリンス（迷い）」「疑問符」「星のくちびる」などが収録されています。これらの楽曲は、来生えつこの作詞、来生たかおの作曲によるもので、ポール・モーリアの編曲によって新たな魅力を引き出されています。

特に「白いラビリンス（迷い）」は、中森明菜への提供曲「白い迷い（ラビリンス）」のセルフカバーであり、シングルとしてもリリースされました。ポール・モーリアもこの曲を気に入っており、アルバムの中でも重要な位置を占めています。

アルバムが持つ意味

『LABYRINTH』は、来生たかおの音楽キャリアにおいて、大きなターニングポイントとなった作品です。ポール・モーリアとの出会いは、来生たかおの音楽性をさらに深化させ、国際的な視野を広げるきっかけとなりました。このアルバムは、日本のポップス史においても、東西の音楽交流の成功例として高く評価されています。

このアルバムは、1991年と2007年にCDとして復刻されています。2007年版は、オリジナルアルバム・企画アルバムを集めた21枚組CD-BOX『来生たかお大全集』に収録されています。

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