VHD

VHD（ビデオハイデンシティディスク）についての詳細

VHD（Video High Density Disc）は、1980年代に日本ビクター（現在のJVCケンウッド）によって開発されたビデオディスクの形式です。これはレコード盤に似た形状を持っており、アナログの静電容量方式を使用する点が特徴です。日本ビクターは1974年にビデオディスクの研究を始め、1978年にはこの技術を発表しました。VHDは、RCAによって商業化されたCED技術と同様に、レコードの針にあたるプローブ電極センサーで信号を読み取ります。

このディスクの設計は、ディスク表面が直接触れないようにキャディー（ジャケット）に収納されています。このため、ディスクは傷やホコリから保護され、扱いやすさが向上しています。外見はレーザーディスクに似ており、光沢のある黒色が際立っています。VHDは、50nmの潤滑層を持ち、圧力が低いため耐久性も考慮されています。映像の水平解像度は240本程度で、VHSやベータと同等ながら、高画質で片面1時間、両面で2時間収録できます。

再生の際には、キャディーごとディスクをプレイヤーに挿入し、特有の動作が行われます。これにより、ディスクに傷や指紋がつくことを回避できるため、手入れが容易です。動作中でも摩耗は少なく、一般家庭での使用ではほとんど影響が見られません。ただし、業務用のカラオケなどの用途では摩耗が問題になることがあり、特に同じディスクが繰り返し使用される場面では注意が必要です。

VHDと同じく接触式のビデオディスクには、1981年にアメリカで商業化されたRCAのCED、ドイツのTeD、松下電器のVISCなどがありますが、これらはすべて異なる設計となっており、VHDとの互換性はありません。

VHD政府の基盤の一つは、製造コストの低さでした。ディスクはレコードと同じように一度のプレスで両面が作成され、二重貼り合わせが不要であったためです。VHDの普及は、日本ビクターがレコード製造技術を活かせる点でも期待されましたが、実際の生産は神奈川県大和市の専用ラインで行われ、商品は日本ビクター映像事業部が手がけました。

規格争いと市場の変化

VHDは、レーザーディスク（LD）と激しい規格争いを繰り広げました。1978年の発表当初は、松下電器が自社方式のVISCを開発していましたが、1980年に松下はVHD方式を選ぶことで、これによって多くのメーカーがVHD陣営に参加しました。初期の段階では、VHD側のメーカー数は13社にも及び、マスメディアでも有利との予測が立てられていました。

しかし、VHD陣営はOEM供給などに留まるメーカーが多く、自社開発に消極的でした。パイオニアはLDの優位性を信じ、ライバルとして一人での参入を決めました。特に、発売が当初の予定から大幅に遅れたことがLDの躍進を許し、最終的にはLDが市場の大部分を占める結果となりました。1984年には、CD/LD両方を再生可能な機器が次々と登場し、これはLDソフト市場の確立に寄与しました。

日本ビクターは1987年に立体映像対応のプレイヤーを発表しましたが、市場の主流がLDに移る中で、VHDは次第に存在感を失っていきました。1990年代に入ると、カラオケ向けに特化したVHDソフトが開発され、長らく生産が続けられましたが、2003年には生産が終了し、歴史の幕を閉じました。VHDは、接触式ビデオディスクの一つとして足跡を残したものの、性能、品質が重視される時代においては優位性を発揮できず、多くの教訓を残しました。

特徴と技術的な優位性

VHDの最大の特徴は、フルランダムアクセスが可能な点です。片面1時間のLDがCLV方式であるのに対し、VHDはCAV方式であり、データのアクセス性が高いことがメリットとされています。このため、既存のLDよりも速いアクセス時間を誇り、利用者の利便性が大いに向上しました。また、特殊な再生機能があり、特にコマ送りや静止画の再生が得意とされていましたが、高速再生時は静止画が明瞭でなくなる場合もありました。

また、VHDは1980年代後半に登場した立体映像機能も特徴的でした。特定のプレイヤーでは、左右の画像を交互に収録したディスクを再生することにより、立体視が可能でしたが、チラつきの問題も同時に抱えていました。これにより、立体映像は一時の流行に終わることとなりました。

さらに、VHDは3つの異なる放送方式に対応している点も特筆すべき特徴です。NTSC、PAL、SECAMの再生ができるため、多様なアイテムにアクセス可能とし、真のリージョンフリーを目指していました。

まとめ

VHDは、1980年代の技術革新の中で生まれた新しいビデオディスクの形式でしたが、多くの競争と技術的遅れから徐々に市場では廃れていきました。カラオケ用ビデオディスクとして一部の需要が残ったものの、主流から外れ、最終的にはその幕を下ろすこととなったのです。VHDの成功と失敗を語ることで、今後の映像技術の発展に寄与することが期待されます。

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