LOVE WAY

「LOVE WAY」（ラブ・ウェイ）は、日本のシンガーソングライター、尾崎豊の通算8枚目となるシングルとして、1990年10月21日にCBS・ソニーから発売されました。この楽曲は、作詞・作曲のみならず、プロデュースも尾崎自身が手掛けた初のセルフプロデュース作品です。所属事務所マザーエンタープライズからの移籍後、第一弾のリリースとなり、前作「太陽の破片」（1988年）から約2年4ヶ月ぶりの新作発表となりました。また、同年11月にリリースされた5枚目のオリジナルアルバム『誕生』からの先行シングルとして位置づけられています。

制作背景

1988年9月に行われた東京ドーム公演「LIVE CORE」の直後、尾崎は所属事務所マザーエンタープライズに辞表を提出しました。この決別の背景には金銭的な問題が表面的な理由とされますが、本質的には古巣であるCBSソニーのディレクター、須藤晃との再度の共同作業を強く望んだことが大きいと推測されています。契約期間が1年残っていたため、音楽活動が制限される期間がありましたが、この間に彼は小説執筆やインタビューなどの活動を行いました。

同時期に『月刊カドカワ』編集長の見城徹と再会したことで、尾崎は同誌で特集が組まれ、さらに小説連載を開始します。これは音楽活動ができない期間における重要な創作活動となりました。1989年7月には長男が誕生し、私生活に変化が訪れます。その後、須藤晃の仲介により、浜田省吾らが所属する音楽事務所「ロード&スカイ」へ移籍し、同時にレコード会社もCBSソニーへ復帰。これにより、念願であった須藤との共同製作が再び可能となりました。

尾崎自身は本作の制作について、当時の音楽シーンにおけるアマチュアバンドが、存在をアピールするために表面的な部分を先行させ、内容が後回しになる傾向に危機感を抱いたことがきっかけだと述べています。彼は、真実を知る人間が飾らない姿で歌うことこそが重要であり、それを体現したのがこの楽曲であるとして、「本質を客観的に見てごらん」というメッセージを込めたと語っています。

須藤晃は、尾崎の楽曲としては珍しい英語タイトルに意外性を感じたそうですが、尾崎は少しでもリスナーに分かりやすくするための配慮だったと答えています。また、歌詞中の哲学的な表現について、尾崎は「共同幻想によって個体がそれぞれ同じ一つの物事に突き進む事で全ての虚像を突き抜ける」というテーマを表現したと述べており、歌詞の難解さへの反応にはむしろ安堵を示しつつ、補足が必要であるとも語っています。須藤は、本作を初期の楽曲「存在」が成長した形であると捉えています。

音楽性と歌詞

「LOVE WAY」は、尾崎が手掛けた同名の短編小説と共通する表現が見られます。この小説は、短編集『普通の愛』（1991年）に収録されており、現実からの逃避としての覚醒剤体験が描かれています。ノンフィクション作家の吉岡忍は、本作の歌詞は非常に難解であり、小説を読むことで理解が進む可能性があると指摘。歌詞については、人々が究極の愛を求めながらも欲望や矛盾に囚われ、善意が傷つけ合い、期待が裏切られる世界を描きつつ、それでも真実を安易に掴めない人間の生き様を描いていると解釈しています。

ライターの落合昇平は、この楽曲を尾崎が見据える最新の「地図」に例え、その世界には確かなものがなく、心は常に満たされず、愛さえも矮小化していく様を描きながらも、「（たとえそうでも）生きていくすべては愛おしいものだ」という力強いメッセージが込められていると分析しています。また、編曲を担当した星勝によるサウンドは、タイトなデジタルビートが次第に熱を帯びていくような表現で、尾崎の前のめりな姿勢を伝えていると評価しています。

音楽評論家の河田拓也は、星勝のアレンジにより、尾崎がデビュー前に持っていたフォークソング的なルーツに立ち返り、井上陽水の楽曲「氷の世界」を彷彿させると指摘しています。畳みかけるような言葉のリズムと、洗練されすぎていないデジタルビートの組み合わせが独特の生々しさと新鮮さを生み出しているとし、歌詞の内容については、愛を求める人間が欲望に翻弄される愚かさも含めて、生きる過程そのものが愛おしいものであると要約しています。

リリースと評価

本作は、8cmCDとカセットテープの2形態でリリースされました。アルバム『誕生』の先行シングルであり、後に同アルバムからは「黄昏ゆく街で」「永遠の胸」がリカットされています。『誕生』のオープニングを飾る楽曲であったことから、落合昇平は、この曲が尾崎の新たな「地図」を描いた重要な作品であったため、アルバムの一曲目に配置されたのではないかと推測しています。

批評家からの評価は分かれ、特に歌詞に対しては否定的な意見が多く見られました。吉岡忍は、尾崎自身の体験に寄り添いすぎている点や、イメージが単純で平板すぎるとの見解を示しています。河田拓也もまた、観念的な言葉の羅列が上滑りしていると感じており、その理由として尾崎の真面目さゆえに細部にこだわりすぎて全体を見失っていること、言葉を記号的に捉え、地に足がつかない表現が多い点を指摘。初期の楽曲のような具体的な対象への掘り下げがなく、ポーズが空回りしているようだと厳しく評価しています。

商業的には成功を収め、オリコンチャートでは最高位2位を記録し、10週にわたってチャートインし、13.6万枚の売り上げを記録しました。

ライブパフォーマンス

「LOVE WAY」は、尾崎の生前最後の全国ツアー「TOUR 1991 BIRTH」およびスタジアムツアー「"BIRTH" スタジアム・ツアー」で演奏されました。ライブでは、スタジオ音源とは異なるアレンジが施されており、特にブリッジ部分が長く拡張され、尾崎による囁きや叫び、ディレイを用いた英語のメッセージなどが加えられるなど、パフォーマンスとしての工夫が凝らされていました。

スタッフ・クレジット（一部抜粋）

プロデューサー、カバー・アート：尾崎豊
ディレクター：須藤晃
レコーディング、ミックス・エンジニア：ラリー・アレクサンダー
参加ミュージシャン：エディ・マルティネス（G）、ケビン・マロニー（Ds, B, Key, Perc Program）、大谷哲範（Key）、ペッカー（Perc）、木村誠（Perc）、ダリル・フィネシー（Cho）、ドリアン・ホリー（Cho）、アルフィー・シラス（Cho）他

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