LUNA MATTINO

LUNA MATTINO：バブル時代の華麗なる幻想と、その消滅、そしてその後

LUNA MATTINO（ルナ・マティーノ）は、1987年から1990年代にかけて存在した日本のファッションブランドです。株式会社JUN（現：株式会社ジェイアンドアール）の朝月真次郎氏が、メンズライン「J&R UOMO」として立ち上げました。ブランド名は、イタリア語で「月」を意味するLunaと「朝」を意味するMattinoを組み合わせたものです。

中世ヨーロッパとバブル景気の融合：唯一無二の世界観

LUNA MATTINOのデザインは、中世ヨーロッパ風の装飾的な要素を基調としていました。しかし、単なる模倣ではなく、独自のアイデンティティが感じられる点が特徴です。原色のスーツや鮮やかなプリントシャツ、ドレープやフリルを効果的に用いたフェミニンなデザイン、そして金やダイヤストーンをふんだんに用いたアクセサリーなど、バブル景気を象徴する華やかさも持ち合わせていました。都会的な洗練の中に非日常的な劇的な雰囲気を醸し出し、他に類を見ない独自の世界観を確立していました。

著名人から絶大な人気：文化・芸能界との密接な関係

その人気は、ファッション業界にとどまりませんでした。文化人、演劇界、音楽業界など、幅広い分野で支持を集めました。鹿賀丈史氏、平幹二朗氏、天海祐希氏、紫苑ゆう氏、麻路さき氏といった著名な俳優・女優のほか、ジャニーズ事務所所属タレント、クライズラー&カンパニー、米米CLUB、TM NETWORK|TM_NETWORK、B'z、THE ALFEE|THE_ALFEEといったミュージシャン、そして後のヴィジュアル系と呼ばれる音楽ジャンルのX JAPAN、LUNA SEA、GLAY、BUCK-TICK、D'ERLANGER、ZI:KILL、JUSTY-NASTY、黒夢など、数多くのアーティストがLUNA MATTINOを愛用していました。海外ではマドンナやプリンスといった世界的スターもその顧客に名を連ね、東京コレクションにも参加するなど、高い評価を得ていました。1990年代初頭には、ジュリアナ東京などのディスコブームの中で、LUNA MATTINOを着用したダンサー集団「ルナ軍団」が話題となり、ブランドの知名度をさらに高めました。1993年頃からは、女性販売員の制服を基にしたレディースラインも展開されました。

ディスコブームの終焉と新たな挑戦：スポーティな要素の導入

しかし、1990年代半ばになると、ディスコブームに陰りが見え始め、社会全体のカジュアル化が加速しました。朝月氏は、この変化をいち早く察知し、LUNA MATTINOのデザインにスポーティな要素を取り入れる試みを始めます。ジョー・マッケナ氏とのコラボレーションはその象徴的な取り組みで、現代的なファンタジーと身体的な動きを融合した新しいスタイルを提案しました。この試みは、人々に新たな価値を提供し、時代の変化に対応しようとするブランドの意欲を示しています。

ブランドの終焉とデザイナーのその後

朝月氏のJUN退社、および株式会社アサツキデザインエンターテインメント設立に伴い、LUNA MATTINOは1990年代後半にその歴史に幕を閉じました。しかし、朝月氏のファッション業界における活動は止まりませんでした。2009年からは戸板女子短期大学服飾芸術科専任教授として教鞭を執り、後進の育成にも尽力しました。その功績から2021年には同校名誉顧問に就任しています。2020年には千葉県富津市に移転し、LUNAMATTINO STUDIOとして地域ブランディングやレンタルスペース運営など、事業を拡大しています。

主要展開店舗

LUNA MATTINOは、直営店として六本木、表参道、銀座などに店舗を展開していました。また、丸井各店（渋谷、新宿、池袋、上野など）にも入っていました。

競合ブランド

LUNA MATTINOの競合ブランドとしては、ジャン＝ポール・ゴルチエ、FICCE UOMO、アーストンボラージュ、トキオクマガイ、コムデギャルソンオム、ワイズフォーメン、ジャンニ・ヴェルサーチなどが挙げられます。

LUNA MATTINOは、バブル時代の華やかさと、中世ヨーロッパ風デザインの独特な融合によって、日本のファッションシーンに大きな足跡を残したブランドと言えるでしょう。その後のデザイナーの活動も、ファッション教育や地域活性化に貢献しており、ブランドの遺産は様々な形で受け継がれています。

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