Lilith

Lilith: チューリッヒ工科大学発の先駆的なワークステーション

Lilithは、チューリッヒ工科大学のニクラウス・ヴィルト教授率いるチームによって開発された、革新的なワークステーションです。1977年にプロジェクトが開始され、1984年までに数百台が製造・利用されました。このワークステーションは、当時としては先進的な機能を多数備えており、後のコンピュータ技術に大きな影響を与えました。

Lilithの主な特徴

プロセッサ: AMD 2901 ビットスライスプロセッサを採用。
ディスプレイ: 高解像度ディスプレイを搭載。
入力デバイス: マウスを標準装備。
出力デバイス: レーザープリンターインターフェースを搭載。
ネットワーク: ネットワークインターフェースを装備。
ソフトウェア: システム全体がModula-2で記述され、Lidasという関係データベースも搭載。

Lilithのクロック周波数は約7MHzで、1秒間に100万から200万命令を実行可能でした。初期の主記憶容量は64kワード（1ワードは16ビット）でしたが、すぐに2倍の128kワードに拡張されました。ただし、通常のModula-2プログラムは変数の格納に先頭の64kワードしか使用できませんでした。

開発の歴史と背景

Lilithの開発は、ニクラウス・ヴィルトが1976年から1977年にかけて、Xeroxのパロアルト研究所でサバティカルを過ごしたことがきっかけとなりました。彼はそこでAltoというワークステーションに触れ、その影響を強く受けました。Altoをヨーロッパに持ち出すことができなかったため、ヴィルトはゼロから独自のシステムを開発することを決意しました。LilithはAltoのコンセプトを継承しつつ、独自の技術と設計が盛り込まれています。また、1985年にヴィルトが再びパロアルト研究所でサバティカルを過ごしたことが、後のOberonの設計に繋がりました。

Lilithの後に開発されたCeresも、Lilithの技術を基に1985年に開発されました。Lilithのマウスは独自設計で、その設計は後にSmakyコンピュータや、Logitechが最初に生産したマウスに影響を与えました。特にLogitechのマウスはLilithのマウス設計をベースにしているとされています。

その他の関連情報

Lilithのクローンとして、ソビエト連邦ではKronosというコンピュータが製造されました。この事実は、Lilithの技術が国際的にも注目されていたことを示しています。

Lilithは、その先進的な設計思想と具体的な実装を通じて、後のコンピュータ技術に大きな影響を与えました。特に、パーソナルコンピュータの概念が普及する以前に、高性能なワークステーションの可能性を示したことは、コンピュータ史において重要な意味を持っています。Modula-2のような先進的なプログラミング言語を全面的に採用した点も、Lilithの特筆すべき点です。

参考文献・外部リンク

Documentation on BitSavers
Geissman, L et al. (August 1982) Lilith Handbook
Knudsen, S (1983) Medos-2: A Modula-2 Oriented Operating System for the Personal Computer Lilith
Wirth, N (1981) The Personal Computer Lilith
Emulith emulator for the Lilith, homepage and documentation
Lilith and Modula-2
ETHistory - Lilith Workstation
AMD AM2901DC entry on CPU World

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