Lotus 1-2-3

Lotus 1-2-3 (ロータス1-2-3)とは

ロータス1-2-3は、ロータス・デベロップメント（現IBM）が開発・販売していた表計算ソフトウェアです。その名称は、表計算、グラフ作成、データベースという3つの主要機能に由来します。1980年代から1990年代初頭にかけて、MS-DOS環境において圧倒的なシェアを誇り、ビジネスシーンにおけるパソコンの普及を牽引しました。日本では「ロータス」あるいは「1-2-3」という略称で親しまれました。

歴史

1983年にミッチ・ケイパーとジョナサン・ザックスによって開発されたロータス1-2-3は、当時のベストセラー表計算ソフトであったVisiCalcの課題を克服し、より高速かつ多機能なソフトウェアとして登場しました。特に、高速な再計算機能、強力なマクロ機能、アドインによる拡張性は、他の競合製品を大きく凌駕しました。MS-DOS版のロータス1-2-3は、IBM PC/AT互換機|PC_AT互換機の普及を後押しし、パソコン市場を大きく変える原動力となりました。1-2-3の人気は互換機の販売を促進し、当時「1-2-3互換機」という言葉が生まれるほどでした。

しかし、OSがMS-DOSからWindowsへと移行するにつれて、ロータス1-2-3は苦境に立たされます。マイクロソフトが開発したExcelがWindowsにいち早く対応し、そのGUIインターフェースと使いやすさから急速にシェアを拡大していきました。ロータス1-2-3もWindows版をリリースしましたが、対応の遅れと操作性の悪さがネックとなり、Excelに大きく水をあけられる結果となりました。

2006年にリリースされた「release 9.8」が最後のバージョンとなり、その後のバージョンアップは行われていません。また、Windows Vista以降のOSには対応せず、2014年にはすべてのサポートが終了しました。

特徴

ロータス1-2-3の最大の特徴は、その高い処理速度にあります。アセンブリ言語で開発されたことで、他のソフトウェアを圧倒する高速な動作を実現しました。また、表計算、グラフ作成、データベース機能に加え、アドインによる機能拡張や強力なマクロ機能も備えており、多様なニーズに対応できる汎用性の高さが支持されました。

特に、MS-DOS版では以下のような特徴がありました。

処理速度: アセンブリ言語による開発で、高速な再計算処理を実現。Multiplanと比較して10倍近い速度であったとも言われています。
機能: 表計算、グラフ作成、データベース機能が統合されており、簡易的なワープロとしても利用可能。アドインやマクロによる機能拡張性も高く評価されました。
* インターフェース: VisiCalcを踏襲した操作性で、ワンキーメニュー呼び出しやポップアップメニューなど、現在のアプリケーションでも標準的な操作方法を確立しました。グラフィック機能も積極的に利用し、美しいグラフを作成することができました。

日本語版の展開

日本語版ロータス1-2-3は、1986年にNEC PC-9800シリーズ向けに発売されました。MS-DOSと日本語入力ソフト「松茸86」をバンドルし、罫線による作表やローソク足チャートなどの機能が追加されました。その後、IBM PS/55、富士通FMR、松下PanacomM、東芝J-3100、日立B16シリーズなど、様々な機種に対応したバージョンがリリースされました。Windows版も1991年に登場しましたが、市場のニーズに応えられず、MS-DOS版ほどの人気を得ることはできませんでした。

販売状況と終焉

ロータス1-2-3は、全世界で累計500万本以上を出荷しました。日本では、ソースネクストが2003年に価格を大幅に引き下げて販売しましたが、2008年には単品販売を終了。その後は、ロータス・スーパーオフィスの形で販売を継続しましたが、2013年に販売が終了しました。ロータス1-2-3は、その歴史に幕を閉じましたが、その功績は今もなお語り継がれています。

まとめ

ロータス1-2-3は、MS-DOS時代を代表する表計算ソフトであり、その革新的な機能と性能は、パソコンの普及とビジネスの効率化に大きく貢献しました。しかし、時代の変化とともに、その勢いは衰退し、マイクロソフトのExcelにその座を譲ることとなりました。ロータス1-2-3は、ソフトウェアの歴史における重要な転換点を示した製品として、今後も語り継がれるでしょう。

もう一度検索