M38 (天体)

散開星団M38 (NGC 1912)

ぎょしゃ座に輝く散開星団M38（メシエカタログ38番）は、正式名称としてはNGC 1912としても知られています。ぎょしゃ座の天球上では、M36やM37といった他の有名なメシエ散開星団と共に視界に入ることが多く、これら三つの星団は概ね南北方向に並んで見え、M38が最も北に位置しています。

見え方

この星団を観察する際、用いる光学機器によってその見え方は異なります。例えば、双眼鏡を用いて広範囲を眺めると、M38は個々の星がはっきりと分離せず、あたかも星団と星雲が混じり合ったような、やや拡散した（diffuse）ぼんやりとした印象を与えることがあります。これは、多数の星が密集しているために、低倍率では個々の光点が識別しにくいためです。

しかしながら、口径の小さな天体望遠鏡であっても、M38は容易に個々の星に分解（分離）して観察することが可能です。望遠鏡を通して高倍率で観察すると、その中に多数の恒星が密集している様子がはっきりと確認できます。特に、M38を構成する明るい星々の中には、特徴的な配列を成しているものがいくつか見られます。この配列は、おおよそギリシャ文字の「π」（パイ）のような形状に見えると形容されることがあり、観測の際の良い目印や楽しみとなります。

観測の歴史

M38は、比較的古くから天文学者たちによって観測されてきた天体です。最も古い記録としては、17世紀中頃、具体的には1654年以前にイタリアの天文学者ジョヴァンニ・バッティスタ・オディエルナによって観測されていたとされています。オディエルナは多くの天体を発見しましたが、残念ながら彼のこのM38に関する発見は当時の学界に広く知られることはなく、彼の業績が正当に評価されるのは後の時代になってからのことでした。

その後、約100年が経過した1749年、フランスの天文学者ギヨーム・ル・ジャンティが独自にM38を「再発見」しました。ル・ジャンティは自身の詳細な観測記録の中で、この天体が「18フィートの焦点距離を持つ望遠鏡で観察した際に、明確な星団として見えた」と記しています。これは、彼が用いた比較的大きな望遠鏡によって、M38が星雲ではなく恒星の集まりであると認識できたことを示しています。

そして、1764年、彗星の捜索で名を馳せたフランスの天文学者シャルル・メシエがM38を自身の有名な「星雲・星団カタログ」（メシエカタログ）に38番目の天体として収録することになります。メシエはM38をカタログに記載する際に、その特徴を以下のように記述しました。「小さい星々から構成される星団」であり、その位置については「ぎょしゃ座のシグマ星（σ星）の近くにあり、先行する（天球上を西へ移動する際に先に視界に入る）M36とM37という二つの星団にも近い」と言及しています。さらに、彼はM38の全体的な見かけの形状を「四角形」と捉え、「注意深く観察すれば、これは星雲のようなぼやけた天体ではなく、個々の星が集まってできたものであることが分かる」と付け加えています。メシエによるこの記述は、M38が散開星団であることを明確に示しており、後の天文学者たちの観測の助けとなりました。

このように、M38は複数の独立した発見者によって記録され、特にメシエカタログへの収録によってその存在が広く知られることとなった、歴史のある散開星団です。ぎょしゃ座にある他のメシエ散開星団と共に、天体観測愛好家にとって人気の対象となっています。

関連項目

* メシエカタログ

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