M5軽戦車

M5軽戦車

M5軽戦車は、第二次世界大戦中にアメリカ合衆国で開発され、連合国軍で使用された軽戦車です。M3軽戦車の改良型であり、「スチュアート」の愛称で親しまれました。イギリス軍では、特にM3軽戦車と区別するため「スチュアートVI」と呼ばれていました。

概要

M3軽戦車は1941年3月に生産が開始されましたが、当初搭載されていたコンチネンタル社製ガソリンエンジンの供給が不足したため、同年7月からはギバースン社製ディーゼルエンジン搭載型も並行して生産されました。しかし、ディーゼルエンジン型は問題が多く、生産数も限られていました。

そこで、ゼネラルモータース社から、同社の高級車ブランドであるキャデラックに搭載されているV型8気筒ガソリンエンジン2基と、キャデラックとオールズモビルに搭載されたオートマチックトランスミッション「Hydramatic」2基をM3軽戦車に搭載する改良案が提示されました。この改良案は承認され、M3E2の形式名で評価試験が行われた結果、1942年2月にM5軽戦車として制式採用されました。

M5軽戦車は、エンジン2基を搭載するためにエンジンルームが大きくなり、前部車体より一段高くなっています。その一方で、内部の居住性はM3軽戦車よりも改善され、砲弾搭載数と燃料積載量も増加しました。また、車体は単純な箱型形状となり、車体前面装甲には傾斜装甲が採用されています。M5は1942年3月から12月までに2,074両が生産されました。

M5の生産開始後、M3軽戦車にM5の技術がフィードバックされ、改良型のM3A3として制式化されました（1942年8月）。そして、M3A3で新規採用された新型砲塔などの技術をM5軽戦車に適用したタイプがM5A1であり、1942年9月に制式化されました。M5A1の生産は1943年から1944年6月までの間に6,810両が行われました。

戦歴

M5軽戦車は1942年11月に北アフリカ戦線で実戦投入され、その後もイタリア戦線、ヨーロッパ戦線に投入されました。しかし、ドイツ国防軍の戦車の攻撃力・防御力が急速に増大したため、ヨーロッパ戦域では主に偵察任務や後方任務で使用され、対戦車戦に投入される機会は少なくなりました。一方、太平洋戦域では日本軍の戦車を相手に互角の戦いを行うことができました。

戦後、余剰となったM5およびM5A1はM3A1やM3A3と共に友好国に供与され、1950年代、60年代に発生した世界各地の紛争に投入されました。1949年には、中華民国軍（台湾軍）に配備されていたM5軽戦車が、中華民国支配地域の金門島に侵攻した中国人民解放軍の撃退に大きな働きをし、中華民国軍から「金門之熊（金門のクマ）」の称号を与えられました。この戦いで使われた戦車は、現在も記念碑として金門島に飾られています。

バリエーション

M5: 原型形式。開発時の形式はM3E2。1942年3月から1942年12月まで2,074両が生産されました。
M5A1: 新型砲塔搭載の改良型。1943年1月から1944年6月まで6,810両が生産されました。砲塔の右に出っ張りがあるのが特徴です。
M8 75mm自走榴弾砲: M5軽戦車の車体に、口径75mmのM2榴弾砲を搭載したオープントップの砲塔を載せたもの。1942年9月から1944年1月まで1,778両が生産されました。
M5指揮／偵察戦車: M5/M5A1の砲塔を取り外し、M2重機関銃を装備した車両。
M5対空戦車: M5/M5A1の砲塔を取り外し、M45D 4連装M2 12.7mm重機関銃架を搭載した車両。
T82自走榴弾砲: ジャングル戦向けの軽自走榴弾砲として、1943年12月に開発が始まったM5A1の車台上にオープントップの固定戦闘室を設け、M3 105mm榴弾砲を搭載した自走榴弾砲の試作車。試作車2輌が製作されましたが、試験で満足する結果を出せず、戦局から必要性も無くなったことから1945年5月に開発中止となりました。

その他

田宮模型から発売されているM5A1軽戦車のプラモデルには、「ヘッジホッグ」のニックネームが付けられています。これは、アメリカ軍がノルマンディー周辺で、低木や潅木の茂みや生垣を突破しやすくするために、戦車や装甲車の車体先端に取り付けた鋤状の器材である「ヘッジロウカッター」を装着した車両に対してのニックネームと思われます。M5／M5A1軽戦車全般に対するニックネームとしては、前述のように、「スチュアート」あるいは「ゼネラル・スチュアート」が一般的です。

登場作品

映画
『デッドゾーン』：回想シーンにドイツ軍戦車として登場。
ドラマ
『ザ・パシフィック』：アメリカ陸軍が使用。
ゲーム
『War Thunder』：アメリカ軽戦車M5A1として登場。
『World of Tanks』：アメリカ軽戦車M5 Stuartとして登場。また中国軽戦車M5A1 Stuartとして登場。
『コール オブ デューティ3』：アメリカ軍の戦車として登場。ヘッジロウカッターを装着。
『パンツァーフロント』
『虫けら戦車』：ヘッジロウカッターを装備しており、名称がヘッジホッグになっている。

参考文献

TM 9-732 M5 Stuart Light Tank Operating Manual，War Department,1944
Zaloga, Steven. M3 & M5 Stuart Light Tank. 1999; Osprey New Vanguard 33. ISBN 978-1-85532-911-9.

関連項目

M3軽戦車
M4中戦車

外部リンク

http://www.robertsarmory.com/m5.htm
http://www.tanks-encyclopedia.com/ww2/US/M5_stuart.php
* http://afvdb.50megs.com/usa/m5stuart.html

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