M55 (天体)

M55（NGC 6809）

M55は、南天の星座の一つであるいて座に輝く、球状星団として知られています。正式名称はNGC 6809であり、メシエ天体リストの55番目に登録されています。

その特異な姿

多くの球状星団は中心に向かって星の密度が急激に高まり、明るく輝く密集した核を形成します。しかし、M55はこの典型的な姿とは異なり、中心部への星の集中度が比較的低く、散開星団に近いXIという低い集中度に分類されています。その一方で、見かけの大きさは満月の視直径の約2/3にも達し、球状星団としては非常に広範囲に広がって見えます。全体として、均一な明るさで、いびつな形状を保ちながら広がっているのが特徴です。

観測の手引き

M55はその大きさから、観測初心者でも比較的容易に楽しめる天体です。双眼鏡を用いても、この星団の存在を十分に確認することができます。口径8cmクラスの小型望遠鏡でも、星団の周辺部に微かな星々がちらつき始めます。さらに口径10cm程度の望遠鏡を用い、観測条件が良ければ、星団の中心部にかすかな白い斑点状の光斑として捉えられるでしょう。そして、口径30cmを超えるような大型望遠鏡を使えば、星団を構成する個々の星を完全に分離し、その壮大な姿を詳細に観察することが可能となります。

観測史の記録

M55は、1752年6月16日にフランスの天文学者ニコラ・ルイ・ド・ラカーユによって、南アフリカのケープタウンで最初に発見されました。ラカーユは自身の記録に「大彗星の微かな核のようだ」とその姿を表現しています。

その後、1778年7月24日には、有名な天体カタログを作成したシャルル・メシエによって独立に観測されました。メシエは、M55を「白っぽく斑点状の星雲であり、まるく明るさの濃淡がなく、個々の星は見えてこない」と記しています。この記述は、当時のメシエの観測機材では、この星団の個々の星を分離して見ることが難しかったことを示唆しています。

イギリスの天文学者ジョン・ハーシェルは、より高性能な望遠鏡を用いてこの星団を観測し、「球状星団である」と明確に分類しました。彼はまた、「11等級から13等級の星に分離可能であり、明るく大きく、非常に多くの星を含んでいる。そして、中心に向かうにつれて徐々に明るくなっている」と詳しく記述しています。メシエの記録とは異なり、ハーシェルは星を分離できただけでなく、中心部が明るくなっている点にも言及しており、観測技術の進歩がその見え方に影響を与えていることが分かります。

フランスの天文学者カミーユ・フラマリオンもまた、M55を詳細に観測しています。彼は「星がはっきりと見え、広範囲にわたり不規則にまかれた星の大集まりであり、星雲状の物質の中に包まれているように見える」と描写しました。さらに、「直径は約6分角で、やや南北に伸びた形状をしている」と具体的なサイズや形にも触れています。フラマリオンはまた、この星団を「南天における驚嘆すべき目標の一つであり、やや青白く見える」と評しており、その美しさと観測対象としての価値を強調しています。

M55の観測史は、時代の異なる観測者たちが、それぞれ異なる機材と視点からこの独特な星団を捉えようとした歴史を物語っています。

関連事項

M55は、シャルル・メシエが作成した著名な天体カタログ、「メシエカタログ」に収録されている天体の一つです。

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