M56スコーピオン

M56 スコーピオン：空挺部隊向けに開発された異色の対戦車自走砲

M56 スコーピオンは、アメリカ合衆国で開発・運用された空挺戦車・対戦車自走砲です。空挺部隊が運用する機動対戦車兵器として、1948年に開発が始まりました。その軽量性と攻撃力から、独自の地位を築きましたが、防御力の低さなどから、短期間で運用を終えることになります。

開発の経緯と概要

当初、開発中のM42（後のM48パットン）の車台を流用する計画でしたが、重量の問題から実現しませんでした。そのため、新たにアルミ合金製の車台を設計し、43口径90mm戦車砲M54を搭載することになりました。

この砲は、左右30度、上下+15度から-10度の旋回範囲を持ち、砲弾は車体後部の弾薬箱に29発が搭載されました。弾薬箱の蓋は、砲手用のプラットフォームを兼ねています。搭載された90mm砲は、当時のアメリカ軍主力戦車と同じものであり、攻撃力だけを見れば、他国の主力戦車とも十分に渡り合える性能を持っていました。

しかし、M56 スコーピオンは、空挺戦車として「軽量であること」が求められたため、防御力は極端に低いものとなりました。オープントップ式の砲塔で、乗員を保護するものは主砲前面のブラストシールド程度しかなく、文字通り「裸」同然の状態でした。

試作名称T101として開発が進められた本車は、1953年にM56空挺対戦車自走砲として制式化されました。

構造と特徴

試作型と量産型では、いくつかの変更点があります。

ブラストシールド（爆風よけ）の形状変更
砲口制御機（マズルブレーキ）の廃止
新たに無線手を兼ねた戦車長を追加し、乗員が4人に

エンジンは、コンチネンタル AOI-402-5 水平対向6気筒空冷ガソリンエンジンが用いられました。転輪には抵抗を減らすためゴムタイヤが使用され、無限軌道（キャタピラ）は、軽量化のために全体で8分割された幅51mmのベルト式が採用されました。

M56 スコーピオンの戦闘重量は7.14tと軽量であり、航空機からのパラシュート投下が可能でした。

実戦投入と退役

1960年代、ベトナム戦争において第173空挺旅団に配備されましたが、防御力の低さから、主に後方の輸送車列護衛任務に使用されました。敵の攻撃に弱く、本来の対戦車任務での活躍は限定的でした。

その後、後継のM551シェリダンに道を譲り、短期間で退役しました。

登場作品

ゲーム
War Thunder: アップデート（Ver1.63）にてアメリカ陸軍ツリーのランクIVに実装
World of Tanks: アメリカ駆逐戦車「M56 Scorpion」として販売

関連項目

空挺戦車
ASU-57
* ASU-85

M56 スコーピオンは、そのユニークな設計思想と、空挺部隊の機動力を支援するという目的から生まれた特異な兵器でしたが、防御力の低さという致命的な欠点により、短期間で姿を消すこととなりました。しかし、その存在は、空挺戦車の開発における一つの教訓として、記憶されるべきでしょう。

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