M76 (天体)

M76は、メシエカタログの76番に登録されている天体で、正式名称はNGC 650およびNGC 651です。太陽系から約2,500光年の距離にあるペルセウス座の方向に位置しており、天文学的な分類では惑星状星雲に属します。その特徴的な形状から、「小亜鈴状星雲（Little Dumbbell Nebula）」という別名でも広く知られています。

特徴

M76は、メシエカタログに収録された天体の中でも比較的淡い部類に入るため、観測にはある程度の口径を持つ望遠鏡が推奨されます。口径8cm程度の小型望遠鏡では、ぼんやりとした楕円形に見えることが多いでしょう。しかし、口径10cmクラスになるとその姿はより明確になり、観測者によっては有名な亜鈴状星雲M27を小さくしたような形状に見え、「滑らかな表面の塊がくっつき合ったような」様子だと表現された記録も残っています。口径20cm以上の望遠鏡を用いると、全体が四角い輪郭に見え始めると同時に、中央部分のくびれが次第に確認できるようになります。多くの惑星状星雲がそうであるように、M76も多少空の状態が良くない場合や、高倍率での観測でも像が薄れにくく、比較的安定して楽しめる観測対象です。

観測史

M76は、1780年9月5日にフランスの天文学者ピエール・メシャンによって発見されました。彼はこの天体を「星を含まない、小さくて微かな」存在として記録しています。同年、シャルル・メシエはこのメシャンの観測を確認し、自身のカタログに76番として追加しました。メシエは、色消し望遠鏡での観察から、これを「星雲状物質を含む小さな星団のように見えた」と記しています。

その後、ウィリアム・ハーシェルがM76を観測した際、彼はこれを「分解されない二重星雲」と見なし、二つの独立した天体として認識しました。このハーシェルの観測に基づき、M76にはNGCカタログにおいてNGC 650とNGC 651という二つの番号が割り当てられることになりました。これは、一つの天体に二つのNGC番号が付与されるという珍しい事例となっています。

19世紀には、他の著名な天文学者たちもM76の観測記録を残しています。ウィリアム・ウェッブは、M76を「青白い星雲で、二重に見える。M27（亜鈴状星雲）の奇妙なミニチュア」と表現しました。また、ロス卿はより詳細なスケッチを試み、「渦巻き状で、連続した盛り上がりが見える。刈り入れ用の鎌のような形だ」と独特の表現を用いています。さらに後の観測者であるフェーレンベルクは、大口径望遠鏡を用いた写真観測から「コルク栓のように見える」と述べ、同時に「NGCカタログでなぜ二つに分けられているのか理解できない」という、ハーシェルの分類に対する疑問も呈しています。

関連項目

* 亜鈴状星雲 (M27)

M76は、その発見から分類、そして様々な観測者による見え方の記録に至るまで、惑星状星雲研究の歴史の中で興味深い位置を占める天体です。

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