MDNA Tour

MDNA Tour：光と闇が交錯するマドンナの伝説的ツアー

MDNA Tourは、2012年にマドンナが行った9回目のワールドツアーであり、彼女の12枚目のスタジオアルバム『MDNA』をサポートするために開催されました。北米、南米、ヨーロッパ、中東を巡り、一部の国では初の公演が実現しました。当初計画されていたオーストラリア公演は残念ながらキャンセルとなりましたが、このツアーはマドンナのキャリアにおいて、記憶に残る出来事となりました。

ツアーのテーマと構成

マドンナ自身が「闇から光への旅」と表現したこのツアーは、Transgression（罪）、Prophecy（予言）、Masculine/Feminine（男/女）、Redemption（解放）の4つのセクションで構成され、教会を模したセットや巨大スクリーン、そして花道が設けられたステージで繰り広げられました。

セットリストとパフォーマンス

コンサートは、Kalakan trioによる聖歌から始まり、マドンナの名前へと変化する詠唱で幕を開けます。『ガール・ゴーン・ワイルド』では、黒いボディスーツを身にまとったマドンナが、同曲のPVと同様のコスチュームを着たダンサーと共にパフォーマンスを披露。『リヴォルヴァー』では自動小銃を持った女性ダンサーが登場し、『Gang Bang』ではモーテル風のセットで銃撃戦が繰り広げられるなど、挑発的な演出が話題を呼びました。

第2セクションでは、マジョレットのコスチュームを着たマドンナが『エクスプレス・ユアセルフ』を歌い、レディー・ガガの『ボーン・ディス・ウェイ』とマドンナの『She's Not Me』がミックスされるなど、音楽的な実験も行われました。その後も、過去のヒット曲を繋いだインタルードや、映画『ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋』のシーンを背景にした『マスターピース』の演奏など、多彩なパフォーマンスが繰り広げられました。

第3セクションでは、かつてのツアーで話題となったゴルチエデザインのコーン型ブラのリメイク版やアヴァンギャルドな服装を纏った『ヴォーグ』が披露され、エロティックな演出も健在でした。最後のセクションでは、ジャンヌ・ダルクにインスパイアされた衣装のマドンナと、シャオリン（少林寺拳法）にインスパイアされた衣装のダンサーによる『I'm Addicted』で始まり、最終曲となる『セレブレイション』では3Dのキューブ映像とともに、DJ風のパフォーマンスが行われました。

物議を醸した演出と発言

MDNA Tourは、その過激な演出や政治的なメッセージにより、多くの論争を巻き起こしました。銃を使ったパフォーマンスや、マリーヌ・ル・ペンの額に卍を重ねる映像など、物議を醸す場面が多数ありました。ロシアではLGBTの権利擁護発言や、プッシー・ライオットへの支援表明が訴訟や脅迫に発展し、大きな波紋を呼びました。

各地での騒動

ワルシャワでは、地元の宗教保守派から教会や宗教的な意匠を使っていることや、同性愛や性転換・女装を促しているとの理由で抗議の声が上がり、公演の中止が求められました。また、マイアミ公演では、公演開始が大幅に遅れたことで観客からブーイングが起こり、マドンナが観客に対して不満を漏らす場面もありました。チリ・サンチアゴ公演では、豪雨による機材トラブルが発生し、一部の演出がカットされるなど、各地で様々な問題が発生しました。

ツアーの成功と影響

数々の論争を巻き起こしながらも、MDNA Tourは商業的には大成功を収めました。チケットは完売となり、ビルボード誌の週間興行成績チャートでは計5回の第一位を獲得。最終興行収入は3億516万ドルに達し、歴代興行収入ランキングでは第10位にランクインしました。

このツアーは、マドンナの音楽的な才能と、社会に対するメッセージを発信する姿勢を改めて示すものとなりました。また、LGBTQ+コミュニティへの支持や、表現の自由の重要性を訴えるなど、社会的な影響も与えました。MDNA Tourは、マドンナのキャリアにおける重要なターニングポイントとなり、彼女の伝説をさらに確固たるものにしたと言えるでしょう。

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