MELLOW (氷室京介のアルバム)

氷室京介の8枚目のオリジナル・アルバム『MELLOW』は、2000年2月23日にポリドール・レコードからリリースされました。前作『I・DÉ・A』から約2年2ヶ月ぶりとなるこのアルバムは、氷室のソロ活動10周年を経て発表された意欲作です。

作詞は森雪之丞と松井五郎、全作曲は氷室京介が担当し、プロデュースも彼自身が手掛けています。レコーディングは、日本国内に加えてアメリカ合衆国でも行われ、スティーヴ・スティーヴンス（ギター）、ヴィニー・カリウタ（ドラムス）、トニー・レヴィン（ベース）など、国内外の著名なミュージシャンが参加。エンジニアには、ニール・ドーフスマンやグラミー賞受賞経験を持つデヴィッド・ビアンコといった一流のスタッフが名を連ねています。

音楽性においては、アップテンポな楽曲を極力排除し、バラードを中心とした構成となっています。氷室自身も「ちょっと異色な存在感を持った作品」と語るように、これまでの作品とは一線を画す、より内省的でメロウな世界観が表現されています。

アルバムからは、「SLEEPLESS NIGHT 〜眠れない夜のために〜」、「ダイヤモンド・ダスト」、「永遠 〜Eternity〜」がシングルカットされました。特に「ダイヤモンド・ダスト」は、フジテレビ系ドラマ『氷の世界』の主題歌として大ヒットを記録し、アルバムのプロモーションに大きく貢献しました。

『MELLOW』は、オリコンアルバムチャートで最高位5位を獲得し、20万枚を超えるセールスを記録。日本レコード協会からゴールド認定を受けています。

背景

ソロデビュー10周年を記念したベストアルバムリリース後、大規模なコンサートツアーを成功させた氷室京介。その勢いを背景に制作されたのが本作『MELLOW』です。過去のライブで最も印象に残っているのが横浜スタジアム公演であると語り、BOØWYを完全に追い抜いたとの実感から絶品であると自画自賛しています。

録音と制作

レコーディングは、アメリカと日本を股にかけて行われました。スティーヴ・スティーヴンスとの親交から、ドラマーのマーク・シュルマンが参加。氷室は本作で初めてPro Toolsを使用して歌録りを行っています。

「ダイヤモンド・ダスト」は、テレビ局プロデューサーからの依頼でドラマ主題歌として制作されました。氷室はプロデューサーとの対話や台本を読み込み、楽曲にドラマの世界観を反映させています。

音楽性

氷室は本作の音楽性について、ビート系の楽曲を極力排除し、メロウな曲のみを収録したと述べています。また、ディレクターの臼井克幸は、渡米後の氷室の楽曲制作の変化について、「ミディアムなナンバーやバラードの作り方が変わった」と指摘。ロサンゼルスでの制作環境が、精神的な面でも良い影響を与えたと語っています。

リリースと評価

アルバムは、初回限定版がデジパック仕様でリリースされました。氷室は当時、音楽業界のメディアミックス戦略に不信感を抱いており、本作ではタイアップを極力避ける戦略を取りました。

音楽情報サイト『CDジャーナル』は、「タイトル通り、メロウな曲がメインの一枚」と評し、氷室のボーカルを「甘くセクシーな歌声」と表現。バラードとの相性の良さを評価しています。また、ロックナンバーがアルバム全体を引き締めている点も評価しました。

ツアー

前回のコンサートツアーが大規模会場のみだったため、本作では小規模な会場でのツアーを希望していましたが、スケジュールの都合により実現せず、次作のリリース後にコンサートツアーが行われることになりました。

『MELLOW』は、氷室京介の音楽的な幅広さと、常に新しい表現を追求する姿勢を示す作品と言えるでしょう。

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