MG・MGB

MG B：英国を代表するスポーツカーの系譜

MG Bは、1962年から1980年にかけて製造された、イギリスのMGブランドを代表する2シーターオープンカーです。そのスタイリッシュなデザインとスポーティな走りで、世界中で52万台以上を販売した大ヒットモデルとなり、現在でも多くの愛好家から支持されているクラシックカーとして知られています。本稿では、MG Bとその派生モデルであるMGB GT、MGC、MGB GT V8について、その歴史、機構、バリエーション、そしてモータースポーツでの活躍など、多角的に解説していきます。

開発の背景と歴史

MG Bは、前モデルであるMGAの後継車種として開発されました。MGAは10万台以上の生産台数を誇る人気車でしたが、MG Bはそれ以上の成功を収めるべく、多くの改良が施されました。MGAのラダーフレーム構造からモノコック構造への変更は、ボディ剛性の向上と、室内空間の拡大に大きく貢献しました。また、軽量な車体と優れたハンドリング、信頼性の高さ、そして比較的容易なメンテナンス性も相まって、瞬く間に人気を獲得しました。

MG Bは、当初から北米市場を強く意識した設計が行われ、生産台数の約3分の2が北米に輸出されました。1960年代には好調な販売を続けましたが、1970年代に入ると、日本車や他の欧州車との競争激化、アメリカのマスキー法による排気ガス規制、そして衝突安全基準の変更による大型バンパーの装備などが、販売低迷の要因となりました。最終的に、1980年10月に生産が終了し、アビンドン工場は閉鎖されました。

ラインナップとバリエーション

MG Bシリーズには、いくつかのバリエーションが存在します。まずボディタイプは、オープンモデルの「ツアラー」 (Roadster) と、ハッチバッククーペの「GT」の2種類があります。GTは1965年に登場し、オープンモデルと比較して高い実用性を提供しました。

エンジンは、基本モデルには1.8L直列4気筒エンジンが搭載されましたが、他に2種類のバリエーションがありました。一つは、MGCに搭載された3.0L直列6気筒エンジン、もう一つは、MGB GT V8に搭載された3.5L V型8気筒エンジンです。MGCは、パワー向上を目指したモデルでしたが、重量増加によるハンドリング性能の悪化が課題となりました。一方、MGB GT V8は、軽量なアルミ合金製V8エンジンにより、パワーアップと優れたハンドリング性能の両立を実現しました。

また、モデルライフ中にはマイナーチェンジが何度か行われ、特に1974年からは、アメリカ合衆国の衝突安全基準に対応した大型のバンパーが装着され、外観が大きく変化しました。このモデルは「ラバーバンパーモデル」として知られています。

機構と特徴

MG Bの基本モデルは、フロントに搭載された1.8L直列4気筒エンジンと、4速マニュアルトランスミッション、そしてリジッドアクスルによる後輪駆動というシンプルな構成でした。モノコックボディは、剛性が高く、走行性能と快適性の向上に貢献しました。サスペンションは、フロントがダブルウイッシュボーン式、リアがリーフスプリング式のリジッドアクスルでした。ブレーキは、フロントがディスクブレーキ、リアがドラムブレーキでした。

モータースポーツ

MGは創業以来、モータースポーツと深く関わってきました。MG Bも例外ではなく、ル・マン24時間耐久レースやセブリング12時間レース、ラリー・モンテカルロなど、数々のレースで活躍しました。特に、有名なラリードライバー、パディ・ホップカークはMG Bで数々の好成績を収めています。現在でも、MG Bを用いたクラシックカーレースが盛んに行われています。

まとめ

MG Bは、美しいデザイン、優れたハンドリング、そして扱いやすさを兼ね備えた、魅力的なスポーツカーでした。その歴史は、イギリス自動車産業の隆盛と衰退、そして北米市場との関わりを象徴するものでもあります。現在、多くのクラシックカー愛好家によって大切に維持・管理され、その輝きを現代に伝えています。多くのバリエーションと、モータースポーツでの活躍も合わせて、MG Bは、スポーツカーの歴史において重要な位置を占める一台と言えるでしょう。

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