MOD (ファイルフォーマット)

MODとは

MODは、コモドール社のホームコンピューターAmigaで誕生した音楽ファイルフォーマット、またはその総称です。初期のMODファイルは、SoundTrackerというソフトウェアをモチーフにしており、そこから派生して様々な形式が生まれました。MODという言葉は、元祖のMOD形式を指すこともあれば、XM (FastTracker2)、S3M (Scream Tracker)、IT (Implse Tracker)といった複数のフォーマットをまとめて指す場合もあります。

MODの特徴

MODは、一般的なMIDIファイルとは異なり、シンセサイザーのような音色データを持たず、ファイル自体に音色が埋め込まれているのが特徴です。このため、MIDIに比べてファイルサイズは大きくなる傾向がありますが、再生環境による音色の差異が少なく、高い再現性で音楽を楽しむことができます。

MODでは、PCMで録音されたサウンドを「Sample」として扱い、音階や音量の変更、エフェクトなどを施して加工します。この加工されたSampleを「Instrument」（楽器）のように扱い、楽譜を入力していくことで音楽を制作します。FastTracker以降のフォーマットでは、一つのInstrumentに複数のSampleを使用できるマルチサンプルに対応しています。

MOD作成ソフトウェア：トラッカー

MODを作成するためのソフトウェアは「トラッカー (Tracker)」と呼ばれており、多くが無料で、または安価でリリースされています。中には日本語に対応したトラッカーも存在します。

主なMODフォーマット

MODには様々なフォーマットが存在します。以下に主なフォーマットとその特徴を説明します。

SoundTracker (.mod)

最も初期のMODフォーマットで、8bitのPCMサウンドのみをサポートしています。Amigaシステム用に開発され、当初は4トラックまで対応していました（現在は32トラックまで対応）。Instrumentは最大15個（後に31個）まで利用可能です。パターンは圧縮されておらず、Instrumentは主にSampleの音量調節のために使用されます。

Amigaシステムでは拡張子をファイル名の後ろに付与する習慣がなかったため、当初は `mod.` のような形式でファイルが保存されていましたが、その後、他のシステムにもトラッカーが移植される過程で、`.mod` という形式が一般的になりました。

AHX

Sampleを含まず、PCMサウンドのデータ自体は含まれていません。代わりに、シンセサイザーがサウンドを合成するための情報が格納されています。そのため、ファイルサイズが非常に小さく（通常1～4KB）、独特のサウンドが特徴です。

AHXは、コモドール64のサウンドにできる限り近い音を出すように設計されています。

ScreamTracker (.s3m)

FM音源をサポートしたフォーマットです。Instrumentsは最大99個まで使用可能となり、Sampleのサンプリング周波数が固定されなくなりました。

FastTracker (.xm)

16bit Sample、マルチサンプル、音量・パンのエンベロープ、パターンの基本的な圧縮に対応しています。最大4GBの音色データを収録でき、チップチューンの共通フォーマットとしてよく使用されています。

Impulse Tracker (.it)

パターンの行数や、Sampleの音質、エフェクトのパラメータにおける制限が大幅に緩和されました。Instruments間でSampleを共有できるようになり、Sample自体もパターンと同様に圧縮されます。世界中の作曲家によって広く使用されているフォーマットです。このフォーマットの完全な仕様は、Impulse Trackerの各バージョンに付属するITTECH.TXTに記述されています。

MadTracker 2 (.mt2)

FastTrackerの拡張版で、VSTなどのソフトウェア音源にも対応しています。

.mo3

MP3/Ogg Vorbisで圧縮されたSampleに対応したフォーマットです。

AMIGA modplayer for MSX Turbo-R (.mod)

MSX Turbo-RでAmigaのMODデータを再生するためのMODプレイヤーです。

外部リンク

全日本波形平和会（波平会） (アーカイブ): MODに関する詳しい解説が掲載されています。
BEMOD: MODとは？
* The Mod Archive

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