MORAL

BOØWYのデビューアルバム『MORAL』：パンクとニューウェーブの融合、そしてバンド結成秘話

1982年3月21日、日本のロックシーンに彗星のごとく現れたBOØWY。そのデビューを飾ったオリジナルアルバム『MORAL』は、後のバンドの成功を予感させる、複雑で魅力的な作品です。本稿では、『MORAL』の音楽性、制作過程、そしてBOØWY結成に至るまでの経緯を詳しく紐解きます。

結成からレコーディングまで：アマチュアバンドからプロへの過渡期

BOØWYの出発点は、1979年のヤマハ主催アマチュアロックバンドコンテスト「EAST WEST'79」。氷室京介と布袋寅泰は、それぞれ別のバンドに所属し決勝で競い合いました。その後、氷室はビーイングと契約しソロデビューを目指しますが、思うようにいかずバンド結成を決意。布袋に連絡を取り、意気投合した二人は、旧友や知人を加え、BOØWYを結成します。当初は「暴威」という名前でしたが、後に「BOØWY」へと変更されました。

メンバーが集まり、レコーディングが始まりましたが、まさに「試行錯誤」の連続でした。当初は氷室の自宅でカセットデッキを用いた簡素な制作でしたが、その後、スターシップスタジオとスタジオバードマンで本格的なレコーディングを行いました。プロデューサーには、当時ビーイングに所属していた渡辺モリオ（マライア）が就任。しかし、メンバーはレコーディング技術に疎く、ほとんど一発録りで進められました。

レコーディング中、ドラマーの木村マモルとのリズム感の相違が明らかになり、オーディションを経て高橋まことが加入。木村は脱退することになりました。完成したアルバム『MORAL』は、パンク・ロックを思わせる過激な歌詞やサウンドでありながらも、ニューウェーブの影響を受けた洗練されたアレンジが施された作品に仕上がりました。

楽曲解説：過激な歌詞と多彩なサウンド

『MORAL』に収録された楽曲は、どれもシングルカットされませんでした。しかし、各曲はBOØWYの初期衝動と才能を余すことなく表しています。

SIDE 1

INTRODUCTION：インストゥルメンタル曲。布袋の作曲によるアルバムの幕開けを飾る、ミステリアスな雰囲気を持つ曲。
IMAGE DOWN：強烈なメッセージが込められたパンクナンバー。歌詞の内容は、当時の社会に対する反骨精神を表しています。
SCHOOL OUT：退学をテーマにした楽曲。不良学生の生き様をストレートに表現した、BOØWYの代表曲のひとつ。
ÉLITE：エリート社会への皮肉を込めた痛烈な歌詞が印象的なパンクナンバー。
GIVE IT TO ME：「お前の体だけが欲しい」という、アンチラブソング。
NO N.Y.：ニューヨークへの憧憬と現実のギャップを描いた、ロマンティックなパンクソング。

SIDE 2

MASS AGE：ハイテンポなパンクロック。ライブでの演奏が特に人気を博した楽曲。
WATCH YOUR BOY：1980年に発生した事件を題材にした、社会風刺的な内容の曲。
RATS：人間の薄っぺらい人間関係を痛烈に皮肉った楽曲。
MORAL：人間の二面性をテーマにした曲。氷室の同級生の死を題材にしたとされる。
GUERRILLA：サラリーマンの悲哀を描いたスカパンク調の楽曲。
ON MY BEAT：BOØWYの信条を表した、爽快なロックナンバー。
* ENDLESS：静かなエンディングナンバー。アルバム全体を締めくくる、美しく切ないメロディー。

リリースと商業的成功

『MORAL』は、当初は日本フォノグラムからのリリースが予定されていましたが、歌詞の内容などが問題視され、リリースは延期されました。最終的にビクター音楽産業からリリースされることとなり、1982年3月21日に発売されました。しかし、オリコンチャートでは最高位80位という結果に終わりました。しかし、このアルバムはBOØWYの音楽的基盤を築き、後の成功の礎となりました。

1988年には、未発表曲3曲を収録した『MORAL+3』がリリースされ、オリコンチャートで1位を獲得。これは、BOØWYの商業的な成功を決定づける大きな転換点となりました。

『MORAL-TRANCE MIX』：トランスアレンジによる新たな解釈

2002年には、全曲トランスアレンジを施したリミックスアルバム『MORAL-TRANCE MIX』がリリースされました。オリジナルとは全く異なる雰囲気を持つこのアルバムは、BOØWYの楽曲の持つ可能性を再確認させる作品となりました。

結論：時代を超えて愛される名盤

『MORAL』は、BOØWYのデビューアルバムとして、バンドの原点であり、その後の音楽的進化の礎となる作品です。パンクとニューウェーブ、そして独自の感性が融合したサウンドは、現在でも多くのリスナーを魅了し続けています。また、BOØWYの結成からレコーディングまでの過程を知ることで、このアルバムの持つ意味がより深く理解できるでしょう。決して商業的な成功を収めたわけではないものの、音楽史に刻まれた、重要な一枚です。

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