MSAS

MSAS（エムサス）：運輸多目的衛星用衛星航法補強システム

MSAS（エムサス、MTSAT Satellite-based Augmentation System）は、日本の静止衛星を利用した衛星航法補強システム（SBAS）です。このシステムは、GPS単独での測位精度を向上させることを目的としています。具体的には、地上に設置された電子基準点で計測されたGPSの測位誤差情報を基に、MTSAT（運輸多目的衛星）を経由して航空機などの受信機に誤差補正信号を提供します。

運用

MSASは、2005年2月26日にMTSAT-1R、2006年2月18日にはMTSAT-2がそれぞれH-IIAロケットによって打ち上げられたことから始まりました。システム運用開始に向け、各種試験と最適化が進められ、2007年9月27日に正式な信号の配信が開始されました。その後、2016年末にMTSAT-1Rが運用を終了しましたが、運輸多目的衛星運用終了後のSBAS機能は、準天頂衛星システムの静止軌道衛星である「みちびき3号機」から2020年4月より引き継がれて配信されています。

地上局としては、国内13箇所に設置されたSLAS監視局が使用されており、常陸太田にある主統制局（MCS)から衛星へデータが送られています。また、バックアップ局（TMC)は所沢に設置されています。

機能と対応

MSASは当初、En Route（航空路）からNPA（Non-Precision Approach：非精密進入）に対応していましたが、2023年からはLPV（Localizer Performance with Vertical Guidance）の試行も開始されています。これにより、より精密な進入が可能な航空機の航法をサポートします。また、将来的な計画として、みちびき6号機・7号機を使用した3機体制や、ICAOで新たに規格化されたL5 SBASへの対応も検討されています。

MSASの主な機能は以下の通りです。

インテグリティ機能: GPSを監視し、99.99999%の確率で保証する誤差範囲情報（保護レベル）を提供します。これにより、システムの信頼性が向上します。
レンジング機能: MTSATをGPSと同様の測位衛星として利用可能にし、システムの信頼性を高めます。
ディファレンシャル機能: 誤差補正値を提供することにより、GPS単独での測位精度（水平方向で約20m程度）を数m以内へと改善します。

他国のSBAS

MSAS以外にも、世界各国で同様の衛星航法補強システムが運用されています。

アメリカ合衆国: WAAS（Wide Area Augmentation System）
欧州: EGNOS（European Geostationary-Satellite Navigation Overlay Service）

これらのシステムも、GPSなどの衛星航法システムの精度と信頼性を向上させるために活用されています。

参考文献

[参考資料1]

関連項目

VOR（VHF Omnidirectional Range）/ DME（Distance Measuring Equipment）/ NDB（Non-Directional Beacon）/ TACAN（Tactical Air Navigation System）
ADS-B（Automatic Dependent Surveillance-Broadcast）

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