MW (漫画)

MW：手塚治虫が生み出した衝撃の物語

手塚治虫の漫画作品『MW』（ムウ）は、1976年から1978年にかけて『ビッグコミック』誌上で連載されました。同性愛と猟奇殺人という、当時としてはタブーとされたテーマを大胆に扱い、多くの読者に衝撃を与えた作品として知られています。2009年には、映画とテレビドラマが制作され、改めて注目を集めました。

物語の核心：同性愛、猟奇殺人、そして化学兵器

『MW』の主人公は、表の顔はエリート銀行員、裏の顔は連続殺人犯という二面性を持つ結城美知夫です。彼は、幼少期に南国の孤島で体験した、ある事件のトラウマを抱えています。その事件とは、外国軍の秘密化学兵器「MW」の漏洩事故です。事故により、島民は惨劇に見舞われ、結城自身もMWの影響を受けます。

このトラウマと、島で出会った不良少年・賀来巌との複雑な関係が、結城の猟奇的な犯罪へと繋がってゆきます。結城と賀来は同性愛者として、歪んだ主従関係を築いており、その関係も物語の重要な要素となっています。

「MW」というタイトルには、様々な解釈があります。主人公の犯行における女装や男娼的行為から「Man & Woman」、化学兵器の性質から「Mad Weapon」、そして人の価値観の反転可能性を示唆する解釈も存在します。

物語は、結城による連続殺人事件と、それを阻止しようとする賀来の葛藤を中心に展開します。結城は復讐を誓い、MWを奪って全世界を巻き込む計画を立てますが、賀来はそんな結城を救済しようと奔走します。しかし、結城は改悛の道を拒み、犯罪を繰り返して行きます。

登場人物：それぞれの影と葛藤

物語には、結城と賀来以外にも、様々な登場人物が登場します。結城の上司である支店長とその娘、結城の捜査にあたる検事や記者、そしてMW漏洩事故に関係する政治家など、それぞれが複雑な思惑や葛藤を抱えています。

特に、賀来は結城の犯罪に巻き込まれながらも、彼を救済しようと試みる複雑な人物像を描いています。神父として神への信仰を持ちながらも、結城との歪んだ関係に苦悩し続ける姿は、読者に強い印象を与えます。

映画とテレビドラマ：原作からの解釈と展開

2009年に公開された映画『MW-ムウ-』と、テレビドラマ『MW-ムウ- 第0章 〜悪魔のゲーム〜』は、原作を基にしながらも、独自の解釈と展開を見せています。映画では、玉木宏と山田孝之が、それぞれ結城と賀来を演じ、同性愛の描写を巡る議論を巻き起こしました。

テレビドラマでは、映画の数ヶ月前に起こった出来事を描いたオリジナルストーリーが展開され、原作にはない新たな登場人物や事件が描かれています。

作品の背景と影響

『MW』は、単なるサスペンス作品にとどまらず、人間の心の闇や社会の歪み、そして同性愛といった社会問題にも鋭く切り込んでいます。沖縄のアメリカ軍基地で起きたVXガス漏洩事故が、MWの物語に影響を与えているという指摘もあります。

手塚治虫の緻密な描写と、深く考えさせられるテーマは、現在でも多くの読者や視聴者を魅了し続けています。

作品情報

原作: 手塚治虫
連載誌: ビッグコミック
単行本: 小学館、講談社などから多数出版
映画: 2009年公開
* テレビドラマ: 2009年放送

『MW』は、人間の業と救済、そして社会の闇を描き出した、手塚治虫の代表作の一つと言えるでしょう。その衝撃的な内容と、今も色褪せないテーマは、多くの読者や視聴者に深い印象を残し続けています。

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