Massive Ordnance Air Blast bomb

MOAB（モアブ）：史上最大の通常爆弾

MOAB（モアブ、英: Massive Ordnance Air Blast、大規模爆風爆弾）、制式名称GBU-43/Bは、アメリカ空軍が開発した大型爆弾です。2017年1月現在、通常兵器としては史上最大の破壊力を持つとされています。

空軍内部では「全ての爆弾の母」（mother of all bombs）と呼ばれることがあります。これは、イラクのサダム・フセイン大統領が湾岸戦争を「全ての戦争の母」（mother of all battles）と呼んだことに由来します。

概要

MOABは、長さ約9.1m、重さ約9,800kgの航空機搭載爆弾で、8,482kgの炸薬が搭載されています。炸薬の種類は明らかにされていませんが、スラリー爆薬またはトリトナール（TNT 80%とアルミニウム粉末20%の混合物）が使用されていると考えられています。基本的な設計思想は、ベトナム戦争やアフガニスタン侵攻で使用されたデイジーカッターと同様です。

MOABの大きさは、第二次世界大戦中に使用されたグランドスラムよりもわずかに小さく、現存する通常爆弾としては最大級です。実地試験では、その凄まじい爆発により、原子爆弾のようにキノコ雲が発生したと伝えられています。

長大な爆弾であるため、アメリカの戦略爆撃機でも搭載できず、C-130やC-17などの大型輸送機からパラシュートで投下されます。デイジーカッターとは異なり、GPS誘導装置を備えており、展開した格子状のフィンによって方向を制御しながら降下します。これにより、デイジーカッターよりも命中精度が高く、高高度からの投下が可能となり、敵の対空砲火にさらされる危険性を低減できます。

MOABの開発後、ロシアではMOABの4倍の威力を持つとされるサーモバリック爆弾ATBIPが開発され、「全ての爆弾の父」というニックネームが付けられました。また、中国も核兵器に次ぐ威力を持つとされる「中国版MOAB」と呼ばれるサーモバリック爆弾を開発し、H-6K爆撃機で投下する実験を公開しています。

開発と運用

MOABは、デイジーカッターの後継として2002年に空軍研究所で開発が始まりました。その後、航空宇宙・防衛企業のダイネティクス社が開発に加わりました。発案から設計図の完成までは、わずか3ヶ月程度という短期間で完了したと言われています。2003年3月11日にフロリダ州のエグリン空軍基地で最初の実地試験が行われ、同年11月にも試験が実施されました。

2003年に始まったイラク戦争では、国防総省が「衝撃と畏怖」戦略の一環としてMOABを対人兵器として使用することを推奨しましたが、実際に使用されることはありませんでした。

2017年4月13日、アフガニスタンのナンガルハール州アチン地区にあるISILのトンネル施設に対して、初めて実戦で使用されました。アメリカ国防総省の発表によると、この攻撃によってISILの戦闘員90人以上が死亡したとされています。この攻撃は、地下要塞を複数持つ北朝鮮に対する牽制であるという憶測もメディアから流れました。

性能諸元

全長：9.14 m
直径：1.03 m
総重量：9,752 kg
炸薬量：8,482 kg

関連項目

デイジーカッター
グランドスラム
イラク戦争
燃料気化爆弾
* 大型貫通爆弾

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