キノコ雲

キノコ雲とは

キノコ雲は、大量の熱エネルギーが局所的に、かつ急激に放出されることで発生する、非常に強力な上昇気流によって形成される雲の一種です。その形状がキノコに似ていることから、この名前で呼ばれています。キノコ雲は、多くの場合、積乱雲へと成長し、通常の積乱雲では到達できないような高度まで達することがあります。

キノコ雲の発生原因

キノコ雲を形成するほどの急激な上昇気流を引き起こす熱源としては、以下のようなものが挙げられます。

核爆弾や大量の爆薬の爆発
大量の燃料の急激な燃焼（爆燃）
火山の噴火

キノコ雲の生成に必要なのは、熱気の塊が水蒸気を含んだ大気中に急速に出現することです。必ずしも爆発や燃焼が必須というわけではありません。

原子雲

原子爆弾や水素爆弾などの核爆発によって生じるキノコ雲は、特に「原子雲」と呼ばれます。大気圏内核爆発では、まず瞬間的に巨大な火球が発生します。これは、核反応時の莫大な熱エネルギーや、核反応によって放出されたX線やガンマ線が空気中の原子に衝突することで、原子が励起されるために起こります。広島や長崎で使用された原子爆弾の場合、火球の直径は200～300メートル程度でした。

火球は、ごく短い時間で膨張しきると、周囲の気体を押し出し、衝撃波と爆風を発生させます。火球の膨張速度と体積が大きいほど、この爆風の威力は強くなります。また、火球は非常に高温であるため、地上付近で爆発した場合、土砂や建造物などが気化して火球に取り込まれます。

火球は、上昇と時間経過とともに冷却されます。この際、気化した物質や周囲から吸い込んだ水蒸気が凝結し、ドーナツ状の還流運動をする雲の塊となります。火球が上昇した後の地表付近では、気圧差から大量の空気が流入し、破砕物や水蒸気を含んで上昇するため、火球につながる雲の柱が生じます。それが上空に達すると冷却され、水平方向に拡散し始め、重力によって地表に引き戻されることで、キノコ型を呈するようになります。

初期の段階では、高温によって生成される亜硝酸や窒素酸化物、核分裂の残骸である核分裂生成物の影響で、赤味や茶色味を帯びますが、温度が低下するにつれて、水滴が多くなり、通常の雲のように白色に変化します。周囲の空気より温度が高い間は上昇を続け、冷却が進むと停止します。雲の形成速度は非常に速く、1メガトンの核爆発の場合、気象条件にもよりますが、高度16キロメートルまで約2.5秒、19キロメートルまで約3.8秒ほどで到達します。

大規模な核爆発では、キノコ雲の頂部が成層圏まで達することがあります。例えば、1メガトンの核爆発では高度約20キロメートル、雲の半径は約9キロメートルに達します。1954年に行われた水爆実験では、キノコ雲の高度は約40キロメートル、直径は約100キロメートルにまで成長しました。

原子雲は、強い上昇力を持つため、雷や雨を伴うことがあります。広島や長崎で降った黒い雨がその例です。ただし、雲中には核兵器の残骸や塵などの放射性物質が含まれています。

通常の積乱雲は、持続的な上昇気流によって数時間以上維持されますが、原子雲の場合、火球が上昇を終えると成長は止まり、周囲に拡散して1時間程度で崩壊します。

キノコ雲とイベント

1976年には、アメリカで広島に投下された原子爆弾を再現するイベントが開催され、地上で爆薬を爆発させてキノコ雲を再現する演出が行われました。このイベントは「原爆ショー」として国際的な問題となり、日本の広島市長や日本政府が抗議しました。

火山の噴煙

火山の噴煙も、状況によってはキノコ状になり、キノコ雲と呼ばれることがあります。通常の高度は数千メートル程度ですが、巨大な爆発では成層圏や中間圏まで達する規模のものも見られます。

関連事項

レイリー・テイラー不安定性
火災積雲
ゴジラ、マタンゴ（キノコ雲がデザインのイメージとして取り入れられている東宝怪獣）
クロスロード作戦

外部リンク

原子雲 広島・長崎 全検証29分 - YouTube
Crossroads Baker - YouTube
Top 5 Biggest Nuclear Weapons Tests - YouTube

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