Medium-dependent interface

MDI (Medium-dependent Interface) とは

MDI（Medium-dependent Interface、メディア依存インターフェース）は、イーサネットにおいて、物理層の回路実装から伝送媒体への接続部分を指します。具体的には、ケーブルやコネクタの種類、信号の電気的・光学的な特性などが、このMDIの仕様に含まれます。また、LANケーブル接続ポートの送受信方式を指す用語としても広く用いられます。

イーサネットにおけるMDIの役割

イーサネットの階層構造では、機器内部の物理層処理デバイス（PHY）からケーブル接続端子までの仕様を一貫してMDIとして規定しています。伝送媒体に接続するための仕様として、コネクタの形状、信号線の本数、電気的特性、光学特性などが、各種物理層規格によって定義されています。以下に具体例を挙げます。

10BASE5のMDI: バンパイアタップまたはN型コネクタを使用し、同軸ケーブルを接続します。10MHzの±1V差動信号を単方向で送受信します。
10BASE2のMDI: T字コネクタを取り付けたBNC[[コネクタ]]を使用し、同軸ケーブルを接続します。10MHzの±1V差動信号を単方向で送受信します。
1000BASE-TのMDI: 8P8C（RJ-45）コネクタを使用し、カテゴリ5のツイストペアケーブルを接続します。PAM5による4対の差動信号を125MBaudの速度で双方向同時に送受信します。
1000BASE-SXのMDI: LCまたはSCコネクタを使用し、マルチモードタイプの光ファイバーを接続します。850nm波長の光信号を1.25GBaudで双方向同時に送受信します。
1000BASE-T1のMDI: LCコネクタを使用し、1対のツイストペア配線を接続します。PAM3による1対の差動信号を750MBaudで双方向同時に送受信します。

MDIとは対照的に、[データリンク層]との機器内部接続には、伝送媒体に依存しない Media-independent interface (MII) が用意されており、PHYとMACの接続仕様が共通化されています。

LANポートにおけるMDIとMDI-X

初期のイーサネットでは、LANケーブル接続ポートに2つの異なるピン接続方式があり、これらをMDIとMDI-Xという用語で区別していました。LANポートは8端子で構成されており、各端子の役割によって以下のように区別されます。

MDI: ポートのピン1・2を送信、ピン3・6を受信に使用します。主に端末（サーバー、ワークステーション）やルーターに実装されます。
MDI-X: ポートのピン1・2を受信、ピン3・6を送信に使用します。主にハブやスイッチに実装されます。

ストレートケーブルとクロスケーブル

"X"は交差接続（クロスオーバー）を意味し、送受信が入れ替わっていることを示します。10BASE-Tや100BASE-TXでは、LANポートの8端子が異なる送受信方向を持っていたため、結線によって以下の2種類のケーブルを使い分ける必要がありました。

ストレートケーブル: 両端のピン1～8がそのままピン1～8に接続されているケーブルです。MDIポートとMDI-Xポートを接続する際に使用します。
クロスケーブル: 一方のピン1・2がもう一方のピン3・6と交差接続されているケーブルです。MDIポート同士、またはMDI-Xポート同士を接続する際に使用します。

2台の機器接続では、常に奇数回の交差接続を行うことで送受信のペアを揃える必要があります。ストレートケーブルでMDIとMDI-Xを接続した場合、MDI-Xポート内部に1回の交差接続があります。クロスケーブルでMDI同士を接続した場合、ケーブル内に1回の交差接続があります。クロスケーブルでMDI-X同士を接続した場合、各ポートとケーブル内で計3回の交差接続があります。

ネットワーク機器には、用途に応じて「uplink/normal」（スイッチ接続用/端末接続用）などの名称でMDIとMDI-Xが切り替え可能なものや、MDIポートとMDI-Xポートが個別に備え付けられているものがありました。これらを使用することで、クロスケーブルが不要になりました。

Auto MDI-X (Auto MDI/MDI-X)

Auto MDI-X（オートMDI/MDI-X、オートクロスオーバーとも）は、LANケーブル接続時に交差接続を検出し、適切な送受信方向を自動で設定する機能です。接続する2台の機器のうち、どちらか一方でAuto MDI-Xが有効であれば、ストレートケーブル・クロスケーブルのどちらでも通信が可能です。

Auto MDI-Xの登場

この機能は、2種類のケーブルを使い分ける煩雑さを解消するために開発されました。従来は、スイッチ同士の接続や端末同士の一対一接続にクロスケーブルが必要でしたが、Auto MDI-Xの登場により不要となりました。

Auto MDI-Xは、1000BASE-Tのオプション機能として標準化されましたが、10BASE-Tや100BASE-TXにも使用できます。近年では、多くのネットワーク機器がこの機能をサポートしており、100Mbps以下の通信機器にも実装され、1Gbps以上の通信機器ではほぼ全てに実装されています。

Auto MDI-Xの仕組み

Auto MDI-Xは、ヒューレット・パッカードのエンジニアであるDaniel Joseph DoveとBruce W. Melvinによって開発されました。初期の実装では、オートネゴシエーションに用いる信号を利用して、LANケーブルの各ペアの送受信を擬似乱数でランダムに切り替えながら通信テストを行い、成功した際の送受信割り当てで通信を開始します。

ポート接続時のリンク確立にかかる時間は通常0.5秒未満です。しかし、両端での送受信切り替えのタイミングが完全に一致してモードが確定しなくなるごく稀なケースに対応するため、最大1.4秒の調整期間が設けられています。

その後、1000BASE-Tでの標準化の際に、Auto MDI-Xは速度固定（オートネゴシエーション無効）設定でも使用できるようになりました。初期実装の古い機器では、オートネゴシエーションを無効にするとAuto MDI-X機器との接続でもリンクが確立できない場合があります。

1000BASE-TにおけるAuto MDI-X

1000BASE-Tでは、従来の専用の送受信ペアは存在せず、双方向の同時伝送に4ペア全てを使用します。さらに、PHY (PMA副層) が4ペアを自動認識するため、ペアとなるピンを分離する必要がなく、どのようなペア入れ替えを行ってもリンクを確立できます。

Auto MDI-Xのアルゴリズムは、初期実装および速度固定時の改良版のそれぞれにおいて、Doveらが特許を取得しています。

関連項目

Media-independent interface (MII)

脚注

外部リンク

Apple products that require an Ethernet crossover cable. June 17, 2011閲覧。)
Diagram of non-automatic connections between MDI and MDIX devices

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