Medium 霊媒探偵城塚翡翠

medium 霊媒探偵城塚翡翠

相沢沙呼による小説『medium 霊媒探偵城塚翡翠』は、2019年に講談社から書き下ろし単行本として刊行され、2021年には講談社文庫として文庫化されました。本作は、城塚翡翠シリーズの第1作であり、第20回本格ミステリ大賞を受賞するなど、ミステリランキングで5冠を達成した人気作品です。2022年には日本テレビ系「日曜ドラマ」枠でテレビドラマ化もされました。

概要

本作は、プロローグ、エピローグ、そして全4話のエピソードで構成されており、各話の間には「インタールード I - III」が挿入されています。その構成から、長編でありながら連作短編集のような趣も持ち合わせています。

作者の相沢沙呼は、当初、泡坂妻夫の「奇術探偵 曾我佳城」シリーズのオマージュとして、『霊媒探偵 城塚翡翠』というタイトルを考えていました。しかし、講談社側から、より広い読者にアピールするために、アルファベットのタイトルにするという提案があり、「霊媒」「中間」「媒介」を意味する『medium』を付けることになったという経緯があります。

本作は、作者が自らに課していた「殺人を扱わない」「マジックのネタをそのままミステリには仕立てない」「作品にテーマを込める」という3つのルールを初めて破り、殺人事件を扱った作品でもあります。

カバーイラストは遠田志帆、ブックデザインは坂野公一が担当。初版の帯には「すべてが、伏線。」というフレーズが金箔押しで印字されており、このフレーズは担当編集者が考えたものです。

あらすじ

第一話 泣き女の殺人

推理作家の香月史郎は、大学の後輩である倉持結花から、霊能者に会ってほしいと頼まれます。結花は、泣いている女の霊に憑かれていると言われ、夢にも現れるようになったと悩んでいました。そこで、美貌の霊媒師・城塚翡翠を紹介され、翡翠は不思議な力で結花の夢枕の理由を探るため、結花の家に行くことを提案します。しかし、翌週、香月と翡翠が結花の自宅を訪れると、そこには頭から血を流して倒れている結花の姿がありました。

第二話 水鏡荘の殺人

香月は翡翠を連れて、小説家と編集者が集まるバーベキューパーティーに参加します。パーティー会場となった水鏡荘では、鏡に謎の女性が映るという怪奇現象が起きていました。香月と翡翠は、霊障の原因を突き止めるために深夜までリビングに残ります。翌朝、水鏡荘の家主である黒越篤が仕事場で殺されているのが発見されます。翡翠は突然、香月に「犯人は、別所さんです」と告げますが、霊視によるものだというだけで証拠はなく、香月は困惑します。

第三話 女子高生連続絞殺事件

香月はサイン会に現れた女子高生の藤間菜月から、連続殺人事件の解決を懇願されます。菜月の通う高校では、2人の女子生徒が犠牲になっていたのです。香月は捜査一課の鐘場正和に連絡を取り、翡翠や若手刑事の蛯名海斗と共に、事件現場を巡り、生徒から話を聞きます。しかし、犯人が見つからないうちに第三の事件が発生し、菜月までもが犠牲になってしまいます。

最終話 VSエリミネーター

香月は、連続死体遺棄事件の被害者遺族から、犯人を捕まえてほしいと依頼されます。4年前から関東で発生している、20代の女性を狙った連続殺人事件。殺害現場が特定されていないため、翡翠の降霊能力も使えず、香月は翡翠では犯人にたどり着けないだろうと考えていました。一方、翡翠は連続殺人鬼・鶴丘文樹に命を狙われており…。

主な登場人物

香月史郎: 主人公の推理作家。翡翠の力を借りながら、論理的に推理して事件を解決していきます。
城塚翡翠: 霊媒師を自称する美しい女性。死者の言葉を伝えることができると主張し、事件の解決に協力します。
千和崎真: 翡翠の助手。
鐘場正和: 警視庁捜査一課の刑事。香月に捜査協力を依頼します。

受賞歴

第20回本格ミステリ大賞
『このミステリーがすごい！ 2020年版』国内編1位
2020本格ミステリ・ベスト10 国内ランキング1位
Apple Booksの「2019年ベストブック」ベストミステリー
* 「2019年SRの会ミステリーベスト10」1位

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