MessagePadは、1993年に
AppleがNewtonプラットフォーム向けに開発した
携帯情報端末(PDA)です。日本ではシャープが製造を担当していました。
RISCプロセッサ「
ARM」をベースに、手書き認識ソフトを搭載したNewton OSを採用していました。
開発の経緯
Newtonの開発は、
Appleの研究開発担当上級副社長であったジャン=ルイ・ガセーが開始しました。1987年後半に始まった開発は、エンジニアのスティーブ・サコマンが主導し、Mac OSのFinderの共同開発者であるスティーブ・キャップスが加わりました。開発は極秘裏に進められ、1990年後半に
Appleの取締役会に開示されました。
ガセーが辞任した後、ラリー・テスラーに率いられたNewtonプロジェクトは、
CPUを
ARMに切り替えつつ、独自OS路線を継続し、
携帯情報端末の開発へと方向転換しました。1992年5月のCESにて、スカリーがPersonal Digital Assistant(PDA)の定義とともにNewtonプラットフォームを発表し、翌年8月に最初のMessagePadが発売されました。
詳細
画面と入力
Newton OS 2.0を搭載したMessagePad 120では、
AppleのNewton Keyboardが利用可能になり、Newton InterConnectポートを持つNewtonデバイスでも使用できるようになりました。Newton OS 2.1以降では、画面を水平方向(横向き)と垂直方向(縦向き)に回転させて使用できるようになり、設定を変更すると、ディスプレイの内容が90度、180度、270度回転します。
手書き認識
初期バージョン(Newton OS 1.x)の手書き認識は、ユーザーによって結果が大きく異なり、不正確な場合がよくありました。オリジナルの手書き認識エンジンはCalligrapherと呼ばれ、ロシアの会社からライセンス供与されたものでした。一方、PalmPilotのGraffitiは、あらかじめ定義された固定のストローク・アルファベットに依存しているため、より正確であると評価されました。
Newton OSは、テキストの編集において、削除したい単語をスクラッチしたり、選択したいテキストを丸で囲んだり、キャレットを使って挿入箇所を書き込んだりと、手書きでの編集が直感的にできる仕組みになっていました。Newton OS 2.0では、
Appleが開発した「Rosetta」と呼ばれる手書きテキスト認識方式が搭載され、Newton OS 2.1で改良されました。
ユーザーインターフェース
QWERTY画面上の仮想キーボードをスタイラスでタップしてテキスト入力も可能ですが、多くのレイアウトが開発されました。Newtonデバイスは、フリーハンドの「スケッチ」「シェイプ」「インクテキスト」も受け入れることができます。「形状」を使用すると、Newton OSは、ユーザーが描画した円、線、
多角形などを認識し、完全なベクトル表現に変換します。Newton noteには、テキスト、インクテキスト、図形、スケッチを自由に組み合わせることができました。
接続性
MessagePad 100シリーズでは、Macintosh独自の
シリアルポートを使用していました。MessagePad 2000/2100モデルには、専用のNewtonInterConnectポートがあります。すべてのNewtonデバイスは
赤外線接続を備えており、
PCカード拡張スロットも装備されていました。これにより、モデムや
イーサネット接続が可能になりました。
電源オプション
オリジナルの
Apple MessagePadとMessagePad 100は、単4電池を使用していました。
Apple MessagePad 110以降は、単3電池に置き換えられました。ニッカドまたはニッケル水素充電池を使用すると、最大30時間動作しました。
市場での反応
MessagePadは発売当初、手書き認識の精度やバッテリー駆動時間などで批判もありましたが、その革新的なコンセプトは評価されました。Newton OSの後期バージョンでは、手書き文字の認識機能が向上し、Newtonユーザーの間で人気が続きました。
その他の用途
MessagePadは、美術館などの文化施設で携帯情報デバイスとして使用されたり、ヘルスケア分野で患者のデータ収集に使用されたりするなど、さまざまな用途で活用されました。
登場作品
MessagePadは、映画「
暴走特急」に登場しました。
関連項目
Apple Newton
eMate 300
ARMアーキテクチャ
ペンコンピューティング