Ms. (ミズ)

Ms. (ミズ)

「Ms.」（ミズ）は、日本の歌手、南沙織の通算27枚目となるシングルとして、1978年8月21日にCBS・ソニーよりリリースされました。

このシングルは、南沙織が1970年代に発表したオリジナル楽曲としては最後の作品に位置づけられます。また、同年に行われた一時的な歌手活動からの引退を前に開催された「さよならコンサート」に先駆けて発売された、キャリアにおける一つの区切りを示す重要なシングルとなりました。

楽曲制作には、彼女のデビューシングル「17才」と同じく、作詞に有馬三恵子、作曲に筒美京平という名コンビが起用されました。A面曲「Ms.」の編曲は筒美京平自身が担当しています。

楽曲に込められたテーマとプロデュース

A面曲「Ms.」の最も顕著な特徴は、デビュー曲「17才」と同様に「海岸」を舞台とした情景が描かれている点です。さらに興味深いことに、1992年に歌手活動を再開した際に最初に発表された新曲「ファンレター -SO GOOD SO NICE-」もまた、海辺を舞台とした楽曲でした。

このように、「17才」、「Ms.」、そして「ファンレター -SO GOOD SO NICE-」という、南沙織のキャリアにおける重要な節目となる3曲が、すべて「海辺」という共通のシチュエーションで関連づけられています。これらの楽曲を通じて、単なる風景描写に留まらず、歌い手である南沙織自身の年齢や経験に合わせた、成長を感じさせる詞の世界が表現されています。

これは、当時の音楽プロデューサーである酒井政利が掲げていた「歌い手自身の成長と楽曲の世界観を連動させる」というプロデュース哲学が色濃く反映された結果であり、「Ms.」は、大人の女性へと成長した南沙織の姿を海辺という原点回帰ともいえる舞台で描いた作品と言えます。

B面曲「さよならにかえて」

シングルのB面に収録された「さよならにかえて」も、A面と同じく有馬三恵子が作詞を担当しました。この楽曲の歌詞は、長年にわたり南沙織（愛称：シンシア）を応援してくれたファンへ向けた、彼女からのメッセージソングとして解釈されています。活動の一区切りを告げるにあたっての「別れ」を歌いながらも、感傷的ではなく、未来への希望を湛えた前向きな心情が表現されており、多くのファンにとって心に残る一曲となりました。この楽曲の編曲は大村雅朗が手がけています。

収録作品

A面曲「Ms.」およびB面曲「さよならにかえて」は、オリジナルアルバムとしては1978年9月リリースの『Simplicity』に初めて収録されました。以降、これらの楽曲は南沙織の代表曲として、数多くのベストアルバムや企画盤に繰り返し収録されています。

主な収録アルバムとしては、当時の『THE BEST』シリーズ各種や『南沙織のすべて』、『Cynthia Memories』、『CYNTHIA ANTHOLOGY』、『GOLDEN J-POP/THE BEST 南沙織|GOLDEN J-POP_THE BEST 南沙織』、『GOLDEN☆BEST 南沙織 筒美京平を歌う』、『Cynthia Premium』など、多岐にわたります。近年では、『ドーナツ盤型12cmCDコレクション』や『ゴールデン☆アイドル 南沙織』といったユニークな形態の作品集にも収められており、時代を超えて多くのリスナーに親しまれています。

特に、「Ms.」は様々な編集盤に収録されるだけでなく、ライブ音源（『Good-by Cynthia』収録など）や、ノンストップミックスバージョン（『TSU-TSU MIX 南沙織』収録）も存在し、その楽曲の持つ存在感の大きさがうかがえます。

もう一度検索