MuPDF

MuPDFは、C言語で記述されたオープンソースのソフトウェアフレームワークであり、PDF、XPS、EPUBといった様々な電子ドキュメント形式の解析とレンダリングを担います。その主な役割は、これらのドキュメントページをビットマップ画像として描画することですが、目次の検索やハイパーリンクの表示といった操作もサポートしています。MuPDFの設計思想は、高速な処理、コンパクトなコードサイズ、そして高品質なアンチエイリアスレンダリングを実現することにあります。

バージョン1.2以降では、フォームへの入力、JavaScriptの実行、ページ切り替え時のトランジション効果など、インタラクティブな機能もオプションで利用できるようになりました。このライブラリには、簡易的なX11およびWindowsビューア、バッチレンダリングを行う`mutool draw`、ファイル構造を調査する`mutool show`、ファイル内容を整理する`mutool clean`といったコマンドラインツールが付属しています。さらに、後のバージョンでは、PDFファイルの作成や編集を行うスクリプトを実行できるJavaScriptインタープリタ`mutool run`も追加されました。

MuPDFは、多くのフリーソフトウェアアプリケーションでPDFドキュメントのレンダリングエンジンとして利用されており、中でもSumatra PDFが有名です。また、ほとんどのUnix系オペレーティングシステムディストリビューションでは、パッケージとして提供されています。

MuPDFの移植性の高さも特筆すべき点であり、Amazon Kindle、HP TouchPad、PlayStation Portable、Wii、DOSといった様々なプラットフォームにサードパーティによって移植されています。

歴史

MuPDFの開発は、2002年にTor Anderssonによって、Raph LevienのLibartレンダリングライブラリを基に開始されました。その後、Artifex SoftwareがMuPDFプロジェクトを買収し、新たなグラフィックスライブラリ「Fitz」の開発に重点を移しました。Fitzは当初、古いGhostscriptグラフィックスライブラリを置き換えるための研究開発プロジェクトでしたが、現在ではMuPDFのレンダリングエンジンとして重要な役割を担っています。

2005年には、新しいFitzライブラリを使用した最初のMuPDFバージョンがリリースされました。

2009年、Artifex SoftwareはPalm, Inc.に対してMuPDFの著作権侵害で訴訟を提起しましたが、2011年にこの訴訟は自発的に取り下げられました。

2011年には、MicrosoftのXPSをサポートする機能が追加されました。このコードはGhostXPSライブラリをベースにしています。

2013年2月、バージョン1.2のリリースに伴い、ライセンスがGNU General Public LicenseからGNU Affero General Public License v3に変更されました。

まとめ

MuPDFは、その高速性、軽量性、高品質なレンダリング能力から、多くのアプリケーションで採用されている重要なライブラリです。多様なプラットフォームへの移植も進んでおり、幅広い環境で利用されています。継続的な開発により、今後もその機能と対応範囲の拡大が期待されます。

外部リンク

* MuPDF

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