EPUB

EPUB（イーパブ）とは



EPUBは、国際電子出版フォーラム（IDPF）が策定した、オープンな電子書籍ファイルフォーマット規格です。 "Electronic PUBlication" の略で、電子書籍の標準フォーマットとして広く利用されています。XML、XHTML、CSS、ZIPを基盤としており、多くのハードウェアやソフトウェアで対応しています。2020年にはISOにより国際規格として承認されました。

概要



EPUBは、HTMLやウェブブラウザのオープン性を維持しつつ、オフライン環境でも電子書籍を閲覧できるように設計されています。特徴的な機能として、画面サイズに合わせて表示を調整する「リフロー機能」があります。これにより、スマートフォンやタブレットなど、様々なデバイスで快適な読書体験が可能です。

以前は、電子書籍のフォーマットがハードウェアに依存していることが多く、出版社や著者はそれぞれのデバイスに対応したソフトウェアを開発する必要がありました。しかし、EPUBの登場により、共通の規格で電子書籍を作成し、配信することが可能になりました。

IDPFは、このような依存性を排除し、誰もが電子書籍を作成したり、関連アプリを開発できるように、EPUBを世界標準規格として推進しています。

歴史



  • - 2007年9月：IDPFがEPUBを公式規格として発表。
  • - 2010年6月：EPUB 2.01のドラフト規格が公開。
  • - 2011年10月：EPUB 3を公式規格として発表。
  • - 2023年5月：W3CがEPUB 3.3などを勧告。

ファイル構造



EPUBファイルは、XHTML形式のコンテンツをZIPで圧縮し、拡張子を「.epub」に変更したものです。

図版・数式・細かいレイアウトへの対応



EPUBは、HTMLでサポートされる画像データやCSSによるデザイン制御に加え、SVGもサポートしているため、図版や数式を多用する作品にも対応できます。

日本語への対応



EPUB 3.0では、縦書きやルビを含む日本語組版に対応しています。しかし、EPUBリーダーごとに挙動が異なる場合や、出版側の意図通りに表示されないことがあります。そのため、日本電子書籍出版社協会（電書協）は「電書協 EPUB 3 制作ガイド」を策定し、日本の電子書籍出版の標準となっています。また、KADOKAWAや電書ラボなど、出版社が独自のサブセットを策定しています。

日本語組版では、CSS3の草案で提案されていたプロパティを、`-epub-`プレフィックスを追加して採用しています。

2.01の仕様上の問題点



  • - 縦組みが指定できない。
  • - 圏点が指定できない。
  • - 割注が指定できない。
  • - 漢文の返り点が指定できない。

これらの問題は、EPUB 2.0.1のベースとなっているXHTML 1.1とCSS2に起因しています。

3.0で追加されたもの



EPUB 3.0では、日本語組版の基本的な機能がカバーされています。

  • - 縦組みと縦中横：CSS3のWriting Modesモジュールを利用。
  • - 圏点と禁則処理：CSS3のTextモジュールにあるプロパティを利用。
  • - ルビ：HTML5にあるruby要素を利用。

ただし、これらの仕様は変更される可能性があるため、EPUBでは`-epub-`プレフィックスをつけた構文を採用することで、不安定さを避けています。

EPUB 2.0.1 の構成



  • - Open Publication Structure (OPS)
  • - Open Packaging Format (OPF)
  • - Open Container Format (OCF)

EPUB 3.0 の開発



日本電子出版協会は、日本語組版の最低限の要求事項をまとめ、IDPFのワーキンググループに提案しました。その後、ワーキンググループで国際化のための要求事項がまとめられ、EPUB 3.0の国際化が実現しました。EPUB 3.0は、日本語だけでなく、台湾や香港の縦書き、アラビア語やヘブライ語などの右から左に書く言語にも対応しています。

EPUB作成ソフトウェア



プロプライエタリ:

  • - 一太郎: 2012以降でEPUB出力に対応。
  • - Adobe InDesign: CS3以降でEPUB出力に対応。
  • - NamoAuthor: EPUB2/3入出力に対応。

オープンソース:

  • - LibreOffice Writer: EPUBエクスポート機能を搭載。
  • - Sigil: Windows、Mac、Linuxに対応したEPUB編集ソフト。
  • - calibre: 電子書籍管理ソフトだが、EPUB編集機能も搭載。
  • - 改造版AozoraEpub3: 青空文庫のテキストファイルをEPUB3に変換。

クラウドベース:

  • - でんでんコンバーター: Markdown記法でEPUB3を生成。
  • - BCCKS: 独自の日本語組版フォーマットに対応。
  • - ムゲンブックス: 縦中横に対応したリフロー型EPUBを生成。

対応プラットフォーム



電子書籍リーダー:


ビューア・ソフトウェア:

  • - Windows: Adobe Digital Editions, BOOK☆WALKER for Windows, calibre, Kinoppy for Windows Desktop/Store, 超縦書
  • - macOS: Adobe Digital Editions, BOOK☆WALKER for Mac, Apple Books, Kinoppy for Mac, Murasaki
  • - iOS: Apple Books, Kinoppy for iOS, 楽天Kobo
  • - Android: Playブックス, ソニーの電子書籍 Reader™
  • - Webブラウザ: BiB/i, EPUBReader, Microsoft Edge (サポート終了), Readium

関連情報




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