My Revolution

「My Revolution」（マイ・レヴォリューション）は、シンガーソングライター渡辺美里が1986年1月22日に発表した4枚目のシングルです。EPIC・ソニー（現在のエピックレコードジャパン）よりリリースされ、この曲は彼女のキャリアにおける重要な転換点となりました。

発表後、オリコン週間チャートで自身初の1位に輝き、約44.5万枚のセールスを記録。これは渡辺美里のシングルの中で最高の売り上げ枚数であり、以来、彼女の代表曲として広く知られるようになりました。

楽曲背景と展開

この楽曲は、1986年のTBS系テレビドラマ『セーラー服通り』の主題歌として書き下ろされました。

テレビ番組での反響も大きく、1986年2月27日放送の音楽番組『ザ・ベストテン』で5位にランクイン。この時の出演が、渡辺美里にとってテレビ番組の生放送における初めてのパフォーマンスとなりました。

また、第28回日本レコード大賞では「金賞」を受賞。授賞式には作曲者の小室哲哉が出席し、渡辺美里がお祝いに駆けつけたというエピソードも残っています。

当初はEP盤のみでの発売でしたが、1989年に入ってシングルCDとしても再リリースされました。

時を経て、2014年8月13日放送のフジテレビ系『2014 FNSうたの夏まつり』では、およそ19年ぶりに渡辺美里と小室哲哉が共演し、この楽曲を披露。さらに2016年7月2日放送の日本テレビ系『THE MUSIC DAY 夏のはじまり。』でも再び共演し、その変わらぬ魅力を見せつけました。

制作過程にみる三者の才能

「My Revolution」の制作には、作詞家・川村真澄、作曲家・小室哲哉、編曲家・大村雅朗という、当時の音楽シーンを牽引する才能が集結しました。

仮タイトルは「m〜3」でしたが、当時のレーベルプロデューサー小坂洋二の発案により、「My Revolution」という象徴的なタイトルに決定。

作詞：川村真澄

作詞は川村真澄が担当。彼女は渡辺美里本人との会話からインスピレーションを得て、「一人でも強く、自立して生きていける女性像」や、「夜の街を一人走り抜けるような、内に秘めた寂しさ」をイメージして歌詞を紡ぎました。後に渡辺自身は、この歌詞の世界観を「クールでこれまでにないタッチ」「『わかり始めた』と歌いつつも、実はまだその深淵を理解しきれていない」と表現し、歌い続ける中で自身の人生を突き動かす曲になっていったと語っています。

作曲：小室哲哉

作曲を手がけたのは小室哲哉です。当時、彼はTM NETWORK|TM_NETWORKとしてデビューはしていたものの、世間的な認知度はまだ低く、作曲家としてのブレイクを強く意識していました。この楽曲に対する彼の意気込みは深く、曲が完成すると自ら渡辺の待つスタジオに赴き、ピアノ演奏でメロディーを伝えたと言われています。

楽曲の特徴である転調は、曲の途中で三度下がるという、当時の日本のポピュラー音楽では珍しい手法であり、洋楽、特にモータウン系のコード進行に近いとされる革新的なものでした。このメロディーを聴いた渡辺は「体中に電気が走るほど凄い！」と感じ、レコーディングエンジニアの伊東俊郎も思わず「この曲いいね！」と声を上げたという逸話は有名です。小室自身も、この曲がコンペで選ばれた時の感動は今でも忘れられないと語り、この曲のヒットを通じて「ヒット曲作りの方向性が見えた」と感じたと同時に、「この後10年近く『My Revolutionのような曲を』という依頼が続き、自分はこれだけではないと思いながら書き続けた」と、その後の創作活動への影響を振り返っています。

編曲：大村雅朗

編曲は名アレンジャーの大村雅朗が担当しました。楽曲の中でも特に印象的な、心に響くイントロのコード進行は、大村の独創的なアイデアによるものです。また、曲中のコーラス部分は、渡辺が何気なく口ずさんだ鼻歌から採用されたもの。渡辺はインタビューで、大村がスタジオを離れた後、「このコーラスを入れた方が曲がもっと良くなるのでは」と思いつき、彼の了解を得ずにレコーディングしてしまったという茶目っ気のあるエピソードを明かしています。

小室が原曲で指定していた転調直前の不安定な印象を与える「Ddim」というコードを、大村はベース音に四度上の音を加えた「Gsus4」へとアレンジ。この変更により楽曲全体の雰囲気が明るくなり、より多くのリスナーに親しみやすく伝わるものになったとされています。

大村は、1992年にリリースされた渡辺美里自身のセルフカバー「My Revolution－第2章－」の編曲も手がけています。後に、同カバーのライブ用アレンジを担当した斉藤恒芳が「大村さんの譜面からは愛情が溢れている」と語ったことを聞いた渡辺は、大村との間にわだかまりを残したまま死別してしまったことを改めて深く後悔したと語っています。

商業的記録と反響

オリコン週間シングルチャートでの推移を見ると、初登場10位から始まり、徐々に順位を上げ、発売から8週目でついに1位を獲得しました。1位を獲得したのはこの1週間のみでしたが、その後も長く10位以内をキープし続け、1986年の年間チャートでは5位にランクインする大ヒットとなりました。累計売上は70万枚とも報じられています。

多様なメディアでの使用と影響

「My Revolution」は、その普遍的なメッセージと力強いメロディーゆえに、発表から時を経ても様々な場面で起用され、多くのアーティストにカバーされています。

主なタイアップ・メディアでの使用例

- 1986年：TBS系ドラマ『セーラー服通り』オープニングテーマ
- 1988年：映画『SO WHAT』主題歌
- 1992年：渡辺美里自身によるセルフカバー「My Revolution -第2章-」発表
- 2001年：朝日放送『部長刑事シリーズシンマイ。』主題歌
- 2002年：大王製紙「エリエール」CMソング
- 2005年：第56回NHK紅白歌合戦にて初披露（スキウタ25位入選）
- 2005年以降：東洋水産「麺づくり」CMソング（ヘビーメタルやダンスミュージックアレンジなど多数）
- 2006年：『ますだおかだのオールナイトニッポン』エンディングテーマ
- 2008年：映画『ハンサム★スーツ』主題歌
- 2013年：MBS『水野真紀の魔法のレストランR』エンディングテーマ（オーケストラVer.）
- 2013年以降：日本テレビ系『月曜から夜ふかし』「株主優待で暮らす桐谷さんシリーズ」コーナーBGM
- 2020年：BSテレ東『真夜中ドラマハイポジ 1986年、二度目の青春。』最終回挿入歌
- 2021年：J-POWER CMソング（オリジナルアレンジ）
- 2023年：テレビ朝日系『仮面ライダーガッチャード』にて主人公の鼻歌として使用

猿岩石によるカバー

お笑いコンビ、猿岩石も1999年1月1日にシングルとしてこの楽曲をカバーしています。こちらはTBS系「愛の劇場」枠で放送されたドラマ『ひなたぼっこ』の主題歌として起用され、猿岩石にとって実質的に最後のシングルとなりました。

その他にも多数のミュージシャンによってカバーされており、世代を超えて歌い継がれるスタンダードナンバーとなっています。

音楽評論家の市川哲史は、この曲について、まだ無名時代の小室哲哉による3度転調といった個性が既に表れている点を指摘。また、川村真澄が描いた「少しの寂しさを抱えながらも力強く前へ進む女性」という歌詞のテーマが、後の小室が書く歌詞にも少なからぬ影響を与えたと評価しています。韓国の音楽プロデューサー、パク・ジニョンも中学生時代にこの曲を聴いたと語っており、国境を越えて影響を与えた楽曲でもあります。

発売から長い年月が経った今も、「My Revolution」は多くの人々の心に響き続け、前向きなメッセージを送り届けています。

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