N-SAT-110

N-SAT-110（エヌサット-ワンテン）

N-SAT-110は日本が運用した人工衛星で、東経110度の静止軌道を周回していました。この衛星は、スカパーJSATによって運用され、国内での通信と放送の中継を行い、特に東南アジア地域、とりわけボルネオ島上空をカバーしていました。N-SAT-110はロッキード・マーティンが製造し、同社のA2100-AX衛星バスをベースにした設計が採用されています。

歴史と操作

N-SAT-110の打ち上げは2000年10月7日に、フランス領ギアナのギアナ宇宙センターからアリアンスペースによってアリアン4ロケットを利用して行われました。衛星は2002年3月1日より、東経110度のCS受託国内放送を開始しました。その後、2019年1月にデオービットが行われ、運用を終了しました。

N-SAT-110の制御に関しては、宇宙通信とJSATがそれぞれ役割を持っており、宇宙通信は衛星の軌道や姿勢制御を担当し、中継業務は両社で分担していました。衛星の名称はN-SAT-110ですが、宇宙通信ではSUPERBIRD D、JSATではJCSAT-110という別名が用いられており、管理の区分に応じてこれらの名前が使われていました。

技術的特性

N-SAT-110は、右旋円偏波のトランスポンダが12本備わっており、これを利用して東経110度CS放送が行われていました。また、衛星基幹放送局の免許を受けた情報を基に、関東総合通信局から許可された6局（12波）が運用されました。さらに、左旋円偏波のトランスポンダ12本は映像通信やIPをはじめとしたデータ通信に活用されました。

提供サービス

スカパーJSATは、N-SAT-110の運用を通じていくつかのサービスを提供していました。たとえば、Sky-AccessやV-Drive110による映像・データ配信、さらにSafetyBIRDによる緊急地震速報等のサービスが挙げられます。これにより、平常時のデータ配信だけでなく、緊急時の情報提供も行われていました。

また、N-SAT-110は他の衛星と連携し、デジタル配信サービスを提供していました。特に、東経144度に位置するSUPERBIRD C2とともに、ケーブルテレビ局向けにデジタルコンテンツの配信を行っていました。加えて、駿台予備学校向けの駿台サテネット21というサービスもあり、教育分野でも活用されていました。

予備衛星と運用の継続

N-SAT-110は長らく運用されていましたが、その後の2011年8月にはBSAT-3c/[[JCSAT-110R|BSAT-3c_JCSAT-110R]]という予備ハイブリッド衛星が打ち上げられ、東経110度通信衛星の運用におけるバックアップとしての役割が期待されました。実際には、N-SAT-110の運用が終了した後も、他の衛星を通じてスカパーJSATがサービスを提供し続けました。日本における衛星放送の進展を象徴する存在であったとは言えるでしょう。

まとめ

N-SAT-110は、日本の通信と放送において重要な役割を果たしてきました。その技術的な優位性や広範なサービス展開は、衛星通信の進化を支えました。今後も日本における衛星放送の歴史において、大きな足跡を残す存在であり続けます。

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