NFR-90

NFR-90: 北大西洋条約機構フリゲート共同開発計画

NFR-90（NATO Frigate Replacement for 1990s）は、1990年代に向けた北大西洋条約機構（NATO）加盟国によるフリゲートの共同開発プロジェクトです。この計画は、海軍のフリゲート艦種の必要性を共有し、各国の技術やリソースを集結させて、新たな次世代艦を開発しようとする試みでした。

来歴

実は、1960年代からNATO加盟国の海軍はフリゲートの共同開発を目指していました。当初は組織的な動きは見られず、イギリス海軍のリアンダー級後継艦とオランダ海軍のホラント級・フリースラント級の共同開発が模索されたものの、最終的には各国が独自に艦の建造を行うことになりました。それでも、イギリスとオランダの艦は主機を共通化しており、さらにはドイツやギリシャの艦もコルテノール級を基にしていたため、少なからず共通設計が実現していました。

こうした背景の中で、1979年12月には任務要求文書（Mission Need Document）が作成され、研究グループが設立されました。1981年からは、実行可能性調査が開始され、約90社と150名のエンジニアが関与することになりました。参加国は当初7カ国で、1983年にスペインが加わり、1985年にはその調査が完了しました。

計画の概要

任務要求文書には、以下のような任務が定義されていました。

• - 世界規模での展開
• - 外部の対潜戦システムとの連携による対潜掃討
• - 防空・対水上戦

1984年には、各国の建造計画が発表され、例えばアメリカ海軍は18隻、イギリス海軍は12隻の建造を予定していました。また、NFR-90は共通の船体と戦闘システムを持つことが想定されていましたが、各国の要求に応じた装備の選択が可能でした。

設計と装備

共通装備としては、NAAWS（NATO Airborne Early Warning System）や区域防空ミサイルシステム（LAMS）などが含まれていました。しかし、各国の要望が異なるため装備品の調整は難航し、特にミサイルの誘導方式でも意見が分かれました。アメリカの提案に対し、フランスとイタリアは異なる技術選定を望んだため、結局、1987年に欧州独自のアスター艦対空ミサイルの開発が合意されました。

計画の頓挫

設計に多くの国々の要求が反映される結果、共通化された船体が全体のコスト低減に寄与することが難しいことが明らかになりました。この影響で協議は難航し、計画は遅延を招くこととなります。西ドイツ海軍は老朽化した艦船の更新のため、1987年にNFR-90とは別に新たなフリゲート建造計画を開始し、結局建造計画は4隻に縮小されることになりました。

その後のコストの上昇とともに、1989年にはイギリス、続いてフランスやイタリアが計画から脱退し、残った参加国は計画の継続を試みましたが、1990年1月18日に正式にキャンセルが決定しました。

その後の展開

NFR-90が中止となった後、イギリスは独自の次期防空艦の開発を進め、またフランスとイギリスは将来のフリゲートに関する新たな計画であるA3F計画を始動しました。その後、1994年にはドイツとオランダ、スペインによるTFC（Trilateral Frigate Cooperation）計画が立ち上がり、最終的に様々な国が独自のフリゲートを建造しています。こうして、NFR-90計画はNATO国のフリゲート建造における一つの試みとして歴史に名を刻むことになりました。

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