NPBアンパイア・スクール

NPBアンパイア・スクールは、日本のプロ野球を統括する日本野球機構（NPB）が主催し、プロ野球審判員の候補者を発掘・育成すること、並びにアマチュア野球における審判技術全体の向上を目的として開設された審判学校です。2013年に創設され、以来、原則として毎年12月に開催されており、2022年までには計9回が実施されています。このスクールでの指導は、現役のNPB審判員や審判長、スーパーバイザーといったプロフェッショナルが担当します。

プログラム内容と概要

スクールの標準的なプログラムは、およそ1週間にわたる合宿形式で行われます。例えば、2021年に開催された第8回の場合、日程は6泊7日でした。午前9時から午後4時までは、埼玉県さいたま市にあるロッテ浦和球場のグラウンドなどで、実技指導が集中的に行われます。守備位置からの動き、コール、ジェスチャーなど、審判として必要な身体的な技術を習得します。一方、夕食後の午後7時から午後9時30分までは、宿泊施設であるプラザホテル浦和の会議室を利用して座学が行われます。ここでは、野球規則に関する知識や、審判としての心構えなど、理論的な側面を深く学びます。実技と座学を組み合わせることで、多角的な審判教育が施されています。

NPB審判員への道

このスクールの最も重要な目的の一つが、将来NPBで活躍するプロ審判員の採用です。スクールの全課程を修了した受講者のうち、成績優秀者と認められた数名には、NPBの育成審判員または研修審判員として採用される道が開かれます。2021年の募集要項では、採用は研修審判員のみとなっていました。

育成審判員は、主にNPBの二軍公式戦であるイースタン・リーグやウエスタン・リーグの試合を担当し、実戦経験を積みます。一方、研修審判員は、NPBとは異なる独立リーグ、具体的にはベースボール・チャレンジ・リーグまたは四国アイランドリーグplusへ派遣されます。独立リーグでの多くの試合を担当することで経験を重ね、そこでその実力が認められれば、翌年に育成審判員へと昇格する可能性があります。育成または研修審判員としてNPBに採用された後、プロ野球の一軍公式戦に出場できる審判員へと正式に昇格するかどうかの判断は、概ね採用から3年を目安に、本人の能力や実績が総合的に評価されて下されます。2022年までに、このスクールを修了し、実際にNPBの審判員として採用された人物は15名を数えます。

応募資格と条件

NPBアンパイア・スクールへの応募資格は、高校を卒業していること（開催年度の3月に卒業見込みの者も含む）です。性別による制限はなく、実際、第1回から女性の参加者も受け入れています。スクールの定員は通常66名ですが、応募多数の場合は書類選考が行われます。受講には費用が必要であり、第1回開催時の受講料は8万5000円でした。また、スクールを受講した希望者は、全日本野球協会が発行する公認審判員3級の認定を受けることが可能です。

新型コロナウイルス感染症の影響

新型コロナウイルス感染症の世界的な流行は、スクールの開催にも影響を及ぼしました。2020年には開催が中止されましたが、2021年には感染対策を講じた上で開催が再開されました。しかし、通常の規模ではなく、定員を36名に削減し、日程も3泊4日へと短縮されました。座学の実施方法も変更され、参加者はホテルの各部屋からリモート形式で受講するなど、対面での密集を避ける工夫がされました。それに伴い、受講料も4万8000円に変更されました。指導を担当する審判員の数も必要最低限にとどめられ、例年行われていた一般市民への公開もこの年は見送られました。

スクール出身審判員の活躍

NPBアンパイア・スクールは、多くの卒業生がプロの道を歩むための第一歩を踏み出す場となっています。スクールの第1期生からは、2014年4月に初めて育成審判員2名、研修審判員2名の計4名がNPBに採用されました。このうちの2名は四国アイランドリーグplus、1名はベースボール・チャレンジ・リーグでの審判経験を持つ人物でした。

この1期生の中で、最初に一軍公式戦出場可能な審判員へと昇格したのは、育成審判員となった青木昴氏（スクール入校前に四国アイランドリーグplusで審判経験あり）で、2016年のことでした。青木氏が一軍公式戦に初めて出場したのは、スクール入学から6年が経過した2019年 4月10日、メットライフドームで行われた埼玉西武ライオンズ対東北楽天ゴールデンイーグルスの試合で、三塁塁審を務めました。また、同じく1期生として採用された水口拓弥氏（こちらも四国アイランドリーグplus出身）は、2021年4月16日に阪神甲子園球場で行われた阪神タイガース対東京ヤクルトスワローズの試合において、自身初の一軍公式戦出場でありながら球審という重要な役割を担いました。このように、スクール出身者たちがプロの舞台で着実に実績を重ねています。

NPBアンパイア・スクールは、野球審判員を目指す人々にとって、プロの世界への扉を開くための重要な機会を提供する場であり、その卒業生たちの今後の活躍にも期待が寄せられています。

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