NRP サグレス

NRPサグレス

N.R.P サグレス（N.R.P SAGRES）は、ポルトガル海軍が所有・運用する大型の練習帆船です。正式名称の「NRP」は、Navio da República Portuguesa（ポルトガル共和国海軍）の略称を示しています。本船はポルトガル海軍において「サグレス」の名を冠する船としては3代目にあたるため、一般にはサグレスIIIとして広く認識されています。船の大きな帆に描かれた、エンリケ航海王子ゆかりのキリスト騎士団の赤い十字紋章は、その象徴として有名です。

本船の名称である「サグレス」は、ポルトガル南端部に位置するアルガルベ地方ヴィラ・ド・ビスポにある町の名に由来します。この地は、大航海時代の幕開けにおいて重要な役割を果たし、エンリケ航海王子が航海学校を設立したとされるサグレス岬に名を連ねる場所です。船名には、ポルトガルの輝かしい海洋史への敬意が込められています。

船の歴史

現在のNRPサグレスの船体は、元々ドイツ海軍のために建造されました。1937年、ドイツのハンブルクにあるブローム・ウント・フォス造船所で起工・進水し、「アルベルト・ レオ・シュラゲーター」という名の練習船としてドイツ海軍によって運用が開始されました。船型は、3本の帆柱を持つ3檣バーク型帆船です。

第二次世界大戦の終結後、「アルベルト・ レオ・シュラゲーター」は戦勝国である連合国によって収容され、その後アメリカ合衆国に接収されることになります。1948年には、アメリカ合衆国からブラジルへとわずか5000ドルで売却されました。船はブラジルのリオデジャネイロへ曳航され、ブラジル海軍の練習船として「グアナバラ」と改名され、長らく運用されました。

ブラジルでの任務を終えた後、1961年10月10日、ポルトガル海軍が本船を購入します。当時、ポルトガル海軍の練習船であったサグレスIIが老朽化していたため、その後継船として15万ドルで取得されました。そして、1962年1月30日以降、正式にNRPサグレスIIIとしてポルトガル海軍の艦籍に入り、現在まで主要な練習船として活躍を続けています。士官候補生たちの実践的な航海訓練に不可欠な存在であり、遠洋航海を通じて多くの人材を育成しています。

世界航海と日本への寄港

NRPサグレスは、これまでに幾度となく世界を巡る遠洋航海を実施しています。特に、1978年と1983年には、それぞれ約1年間にわたる大規模な世界一周航海を成功させています。1983年の世界航海の際には、日本の大阪世界帆船まつり’83に参加するため、大阪港にも寄港し、日本の人々にその美しい姿を披露しました。

近年では、2010年に再び大規模な世界航海を行いました。同年1月19日にリスボンを出航し、同年12月に帰港する計画のこの航海では、日本にも寄港しています。これは、明治政府とポルトガルとの間で修好通商条約が締結されてから150周年を迎えたことを記念するもので、実に17年ぶりとなる日本への再訪でした。この時、NRPサグレスは横浜港に入港したほか、種子島や長崎にも足を運び、日本とポルトガルの友好関係を深める役割を果たしました。

姉妹船と関連事項

NRPサグレスは、元となったドイツ海軍の練習帆船クラスの姉妹船を複数持っています。

ゴルヒ・フォック（1933年建造）
イーグル（現アメリカ沿岸警備隊）
ミルチャ（現ルーマニア海軍実習船）
ヘルベルト・ノルクス（未完成に終わる）
ゴルヒ・フォック（1958年建造）

練習帆船や大型帆船に関連する事項としては、以下のようなものが挙げられます。

トールシップ
練習船
日本丸
* 海王丸

NRPサグレスは、単なる訓練艦としてだけでなく、ポルトガルの海洋国家としての伝統と文化を象徴する「海の親善大使」としても世界各国で歓迎されています。

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