NSFヴェラ・C・ルービン天文台

ヴェラ・C・ルービン天文台：宇宙の謎を解き明かす巨大望遠鏡

チリ共和国のパチョン山に位置するヴェラ・C・ルービン天文台は、天文学の未来を担う画期的な天文施設です。かつてLarge Synoptic Survey Telescope（LSST）と呼ばれていましたが、2020年にアメリカの著名な天文学者、ヴェラ・ルービン博士の名を冠して改名されました。この天文台の中核をなすのは、口径8.4mの巨大な可視光赤外線望遠鏡、シモニー・サーベイ望遠鏡です。その建設には、アメリカ国立科学財団（NSF）とエネルギー省が中心となり、22の大学、研究所、企業が連携して取り組みました。

計測機器と観測目標

シモニー・サーベイ望遠鏡は、32億画素という驚異的な解像度を誇る3.2ギガピクセルのCCDセンサーを搭載しています。この巨大カメラによって、9.6平方度という超広視野の観測を実現しました。この広視野は、3晩で観測可能な全天域を撮影できるほどの能力を意味します。

この天文台の主な目的は、Legacy Survey of Space and Time（LSST）と呼ばれる広域観測プログラムです。このプログラムを通して、以下の研究が推進されます。

ダークエネルギーの解明: 宇宙の加速膨張を引き起こすダークエネルギーの分布を詳細にマッピングします。
未知の太陽系天体の探査: これまで発見されていなかった小惑星や彗星などの太陽系天体を多数発見することを目指します。
突発天体の観測: 超新星爆発やガンマ線バーストなどの突発現象をリアルタイムで捉え、そのメカニズムを解明します。
銀河系の掃天観測: 銀河系の構造や進化を理解するために、銀河系内の星々やガス、塵などを網羅的に観測します。

短時間の変動現象、例えば超新星爆発や地球近傍小惑星の観測にも力を発揮します。これらは従来の観測手法では困難だった分野であり、ルービン天文台の観測能力は、これらの天体の研究に革命を起こす可能性を秘めています。

1晩の観測で生成されるデータ量は15テラバイト、1年間で6.8ペタバイトにも及ぶと推定されています。この膨大なデータを処理するため、GoogleなどのIT企業もこのプロジェクトに協力しています。

建設と資金

2003年から建設地の選定が始まり、チリのパチョン山、ラスカンパナス天文台、メキシコのサン・ペドロ・マルティル、スペインのラ・パルマ島が候補に挙がりました。最終的に、天候や地質学的・環境的な条件を総合的に考慮して、パチョン山が選ばれました。この地には、ジェミニ天文台やSOAR望遠鏡などの既存の天文施設もあり、研究環境としても優れています。

建設には莫大な費用が必要で、アリゾナ大学、アメリカ国立科学財団、W.M.ケック財団、TABASGO財団、チャールズ・シモニー氏、ビル・ゲイツ氏など、多くの機関や個人から資金提供がありました。NSFは2014年から2022年にかけて、天文台建設に4億7300万ドルを拠出しました。また、望遠鏡の核となる広視野カメラの開発は、米国エネルギー省が支援し、SLAC国立加速器研究所が主導しました。

まとめ

ヴェラ・C・ルービン天文台は、その巨大な望遠鏡と先進的な観測技術によって、天文学の様々な分野に大きな進歩をもたらすと期待されています。ダークエネルギーの謎の解明から太陽系外天体の探査、突発現象の研究まで、その観測データは宇宙の理解を深める上で貴重な情報源となるでしょう。さらに、GoogleなどのIT企業の協力により、膨大なデータの解析も効率的に行われ、新たな発見が続々と生まれる可能性を秘めています。この天文台は、21世紀の天文学を代表する施設として、未来の天文学研究を牽引していくことでしょう。

もう一度検索