No.74粘着手榴弾

No.74粘着手榴弾（スティッキーボム）とは

No.74粘着手榴弾、通称「スティッキーボム」は、第二次世界大戦中にイギリスで開発・配備された対戦車手榴弾です。イギリス陸軍とホーム・ガードで使用されました。

ダンケルク撤退で装備を失ったイギリス軍が、対戦車兵器不足を補うために開発されたもので、MIR(c)という兵器設計チームが開発を担当しました。

構造

ニトログリセリンを詰めたガラス球を強力な接着剤で覆い、金属ケースで保護した構造をしています。

使用時は、ピンを抜いて金属ケースを取り除き、ガラス球を露出させます。内部の起爆装置を作動させる安全ピンも外した後、戦車に吸着させます。吸着後、レバーを解除すると5秒後に爆発する仕組みです。

開発の背景

1940年、ナチス・ドイツのフランス侵攻により、イギリス本土への侵攻が現実味を帯びていました。しかし、イギリス軍はダンケルク撤退で多くの装備を失い、祖国を防衛するだけの戦力がありませんでした。特に、対戦車ライフルの不足は深刻でした。

そこで、イギリス軍は急場しのぎとして、利用可能なあらゆる兵器をかき集めました。ホーム・ガードには、時代遅れの兵器や弾薬が供給されました。そうした中で、MIR(c)は、占領下のヨーロッパでゲリラやレジスタンスが使用できる兵器の開発・供給を行いました。その過程で、No.74粘着手榴弾が開発されることになったのです。

ウィンストン・チャーチル首相は、この手榴弾の開発に強い関心を示し、早期の開発と生産を指示しました。

設計上の問題点

No.74粘着手榴弾には、いくつかの設計上の問題点がありました。

埃や泥に覆われた戦車には吸着しにくい。
使用者の衣服に接着剤が付着しやすい。
ニトログリセリンが経年劣化により不安定になる。

これらの問題点から、陸軍省の兵器委員会は当初、この手榴弾をイギリス陸軍の制式兵器として承認しませんでした。しかし、チャーチル首相の強い意向により、量産化が決定されました。

戦歴

No.74粘着手榴弾は、1940年から1943年の間に約250万発が生産され、主にホーム・ガードに供給されました。また、北アフリカ戦線ではイギリス軍やイギリス連邦軍によって使用され、ドイツ軍戦車を撃破する戦果を上げました。オーストラリア陸軍もニューギニアの戦いで使用し、フランスのレジスタンスにも供給されました。

使用国

オーストラリア
自由フランス
イギリス

関連項目

PIAT
ブラッカー・ボンバード

No.74粘着手榴弾は、欠点も多かったものの、イギリス軍の対戦車戦力不足を補うために重要な役割を果たしました。また、そのユニークな構造は、後の兵器開発にも影響を与えました。

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