ORIGINAL LOVE (アルバム)

『ORIGINAL LOVE』：初期の混沌と音楽的探求の記録

1988年8月1日、インディーズレーベルのハラハラレコードからリリースされたORIGINAL LOVEのファーストアルバム『ORIGINAL LOVE』は、その後の音楽シーンに大きな影響を与えることになるバンドの初期衝動と、音楽的探求の軌跡を捉えた作品です。このアルバムは、バンドがメジャーデビューを果たす以前の、未完成ながらも熱量の高いサウンドを記録しており、その後の彼らの音楽性を理解する上で非常に重要な一枚となっています。

制作背景

ORIGINAL LOVEの前身となるバンド「レッド・カーテン」での活動を経て、田島貴男がピチカート・ファイヴに加入することになったため、ORIGINAL LOVEとしての作品を形に残す必要に迫られ制作されました。作詞・作曲はすべて田島が手掛け、プロデュースは元はちみつぱいの和田博巳が担当しています。田島はこのアルバムを「当時のORIGINAL LOVEのある部分的な側面の記録」と位置づけ、急ごしらえで制作されたことを示唆しています。

田島貴男の音楽的ルーツ

田島貴男は、小学生時代にビートルズに衝撃を受け、音楽に目覚めます。その後、パンク・ロックにも影響を受け、ギターを弾き続ける日々を送ります。中学校時代にはオリジナル曲の制作を開始し、高校時代にはバンドを結成。大学進学後、軽音楽サークルで出会った仲間と「レッド・カーテン」を結成しました。この頃から、田島は自身の音楽性を模索し始め、様々なジャンルの音楽を吸収していきます。

レッド・カーテンからORIGINAL LOVEへ

レッド・カーテンは、ネオGSブームに乗って注目を集めますが、田島自身はネオGSの音楽を作っているという意識はなかったと言います。1988年にバンド名をORIGINAL LOVEに変更し、音楽の方向性を少しずつ変化させていきます。レッド・カーテン時代はビートロックのような音楽性でしたが、ORIGINAL LOVEとなってからは、ビッグバンドやジャイブなどのポップミュージックやロックンロールの原点となる音楽へと趣向が変化していきます。この時期に田島は、チャック・ベリーやルイ・ジョーダンなどのルーツミュージックを探求し、「キャブ・キャロウェイになりたい、ルイ・ジョーダンになりたい」という思いを抱いていたといいます。

録音と制作

本作のレコーディングは、各楽器ごとに別々のスタジオを使用し、機材も十分ではなかったため、田島自身は「デモテープの寄せ集めに毛が生えたようなもの」と評しています。しかし、その混沌としたサウンドこそが、本作の魅力の一つとなっています。
音楽評論家の萩原健太は、「若さゆえの暴走」と評し、アレンジの乱暴さを指摘しながらも、その混沌とした魅力は「今振り返って聴いてみると、この混沌も悪くない」と述べています。また、ビッグ・バンド・ジャズなどの要素を、ニュー・ウェイヴ世代以降の感覚で再構築した点も評価しています。

音楽性とルーツ

ORIGINAL LOVEは、本作に至るまでに音楽性を変化させてきました。田島は、自作曲を発露するためにレッド・カーテンを結成したものの、明確な音楽的方向性を持たず、試行錯誤を繰り返していました。当時、ネオGSのバンドとして認識されていましたが、田島自身は自身の音楽を「ヘンなニュー・ウェイヴ」と捉えていました。ORIGINAL LOVEに改名してからは、ビートロックからジャイブやビッグバンドなど、ポップミュージックのルーツを探る方向に変化しました。また、ブラックミュージックを愛聴していた田島は、ソウルミュージックに傾倒しましたが、その制作方法に苦労したと語っています。

収録曲と再録

本作には、後にメジャーデビュー後のアルバム『LOVE! LOVE! & LOVE!』に再録音される「ORANGE MECHANIC SUICIDE」「DARLIN'」「BODY FRESHER」などが収録されています。これらの楽曲は、再録音版と聴き比べると、本作のバージョンはより混沌としており、バンドの初期衝動を感じさせます。
「X'mas NO HI」は、コンピレーションアルバム『MINT SOUND'S CHRISTMAS ALBUM』に収録されたものと同音源です。

リリースと再発

本作は、インディーズからのリリースだったため、長らく入手困難な状態が続いていましたが、2000年に初CD化されました。その後、2011年にはベストアルバム『RED CURTAIN Original Love|Original_Love early days』に、リマスタリングされた全曲が収録されました。さらに、2021年にはデビュー30周年記念ベストアルバム『Flowers bloom, Birds tweet, Wind blows & Moon shining』にも2曲が収録されています。

まとめ

『ORIGINAL LOVE』は、バンドの初期の未成熟さ、混沌としたサウンド、そして音楽的探求の軌跡が詰め込まれた、非常に貴重なアルバムです。田島貴男のルーツミュージックへの愛情と、それを自分たちの音楽に昇華させようとする初期衝動が、このアルバムには色濃く反映されています。このアルバムを聴くことで、その後のORIGINAL LOVEの音楽性をより深く理解することができるでしょう。

収録曲

1. GOOD MORNING
2. GALAXY
3. TALKIN' PLANET SANDWICH
4. JUMP JUMP
5. ORANGE MECHANIC SUICIDE
6. X'mas NO HI
7. DARLIN'
8. BODY FRESHER
9. MID NIGHT JOKE
10. SUNDAY TIME

参加ミュージシャン

田島貴男：ボーカル、アコースティックギター
村山孝志：エレクトリックギター、ダブルネックギター
小里誠：ベース、キーボード
秋山幸広：ドラムス、パーカッション
宮越ひろき：アルトサックス
善方寛：テナーサックス
* 西岡弘之：トランペット

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