P-120 (ミサイル)

P-120「マラヒート」（ロシア語: П-120 «Малахит»）は、ソビエト連邦で開発された中射程対艦ミサイルであり、「孔雀石」を意味する愛称を持ちます。GRAUインデックスは4K85、DoD識別番号はSS-N-9、NATOコードネームは「サイレン」として知られています。

開発経緯

1963年2月28日、第52設計局（OKB-52）は、P-70「アメチスト」（SS-N-7「スターブライト」）を発展させたミサイルの開発依頼を受けました。同年9月に最初の試案が提出され、1964年2月には略式設計案が完成しました。1968年には第301機械製造工場で最初の試作機が製造され、同年9月から1969年2月にかけて誘導装置非搭載の発射・飛行試験、7月から10月には水中発射試験（水深50メートル）、地上・洋上での発射試験が行われました。地上・洋上発射試験は計10回行われ、半数の5回が目標に命中しました。1970年9月から1972年2月にかけて総合発射試験が繰り返された後、1972年3月17日に水上発射型が海軍に引き渡され、1234型小型ミサイル艦（ナヌチュカ型）の主兵装となりました。水中発射型は、搭載艦の検討に時間がかかったため、1977年11月21日に引き渡されました。

性能

P-120はP-70と比較して、射程が倍増し、飛翔高度が低高度化されました。P-70が水中発射専用であったのに対し、新設計の固体燃料ロケット・ブースターの採用によって水上艦での運用も可能になりました。また、発射準備時間もP-70の7割に短縮されています。

しかし、同時期に北大西洋条約機構（NATO）の艦隊防空・対潜戦能力が向上したため、長射程対艦ミサイルの水中発射化が求められるようになりました。そのため、P-120を搭載した巡航ミサイル潜水艦は670M型潜水艦（チャーリーII型）のみとなり、より大型で長射程・超音速のP-500「バザーリト」やP-700「グラニート」へと配備が移行しました。670M型潜水艦は、戦闘力・操縦性・静粛性が高く評価され、アメリカ海軍の空母機動部隊などの追尾任務に多く投入されました。しかし、巡航ミサイルは敵の対空ミサイルに発見・破壊される可能性が高いと考えられていました。

配備

ソビエト連邦海軍 / ロシア海軍
1234型小型ミサイル艦（ナヌチュカ型）
* 670M型潜水艦（チャーリーII型）

実戦使用

2008年8月10日、南オセチア紛争中のアブハジア沖海戦において、1234型小型ミサイル艦「ミラーシュ」から発射されたP-120によってグルジア海軍の哨戒艇「ゲオルギー・トレリ」が撃沈されました。

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