PDPシリーズ

PDPシリーズ：ミニコンピュータの先駆け

PDP（Programmed Data Processor）シリーズは、デジタル・イクイップメント・コーポレーション(DEC)が1957年から1990年にかけて製造したコンピュータシリーズです。当時、コンピュータといえば大型で高価なメインフレームが主流でしたが、PDPシリーズは比較的小型で低価格なミニコンピュータ市場を開拓しました。当初、DECがコンピュータという名称を避けたのは、資金提供者であるベンチャーキャピタルがその言葉に警戒感を持っていたためという逸話もあります。

PDPシリーズは、基本的にワード長によってファミリ分けされていますが、16[[ビット]]のPDP-11は例外的に36ビットのPDP-6やPDP-10に近いアーキテクチャを持っています。

PDPシリーズの主なモデル

PDP-1 (1960)
最初のPDP。18ビットマシンで、初期のタイムシェアリングOSが動作しました。ハッカー文化の源流の一つとされ、世界初のコンピュータゲーム「スペースウォー!」が開発されたことでも知られます。
PDP-2
24ビットマシン向けに予約された番号ですが、実際には設計されませんでした。
PDP-3
DEC初の36ビットマシンですが、製品としては販売されず、CIAのScientific Engineering Institute (SEI)向けに製造されました。ロッキードA-12偵察機のレーダー反射断面積のデータ処理に使用されました。
PDP-4
PDP-1の低価格版として開発されましたが、商業的には成功しませんでした。後の18ビットPDP (PDP-7/9/15) の命令セットのベースとなりました。
PDP-5
DEC初の12ビットマシンで、後のPDP-8の命令セットの基礎となりました。コスト削減のため、メモリの0番地をプログラムカウンタとして使用しました。
PDP-6
36ビットのタイムシェアリングマシンで、非常に洗練されたアーキテクチャを持っていました。大型ミニコンピュータ、または汎用コンピュータとして扱われました。
PDP-7
PDP-4の後継機となる18ビットマシンで、DEC初のワイヤーラップ機です。初期のUNIXやMUMPSが開発されたマシンとしても有名です。
PDP-8
PDP-5の命令セットをベースにした12ビットマシンで、DECにとって商業的に最初の成功を収めたコンピュータです。ミニコンピュータ革命のきっかけとなり、学校や研究所などに広く導入されました。
LINC-8
LINCとPDP-8を組み合わせたコンピュータで、2つの命令セットを持っています。後のPDP-12の基礎となりました。
PDP-9
PDP-7の後継機で、DEC初のマイクロプログラム方式のマシンです。
PDP-10
36ビットのタイムシェアリングマシンで、複数の機種が開発されるなど、成功を収めました。命令セットはPDP-6から若干複雑化しました。
PDP-11
16[[ビット]]ミニコンピュータの代表的な存在です。優れた16[[ビット]]命令セットを持ち、組み込みシステム向けのLSI-11や32[[ビット]]のVAXシリーズへと発展しました。PDP-11の命令セットは、モトローラのMC68000などにも影響を与えました。
PDP-12
LINC-8の後継機です。
PDP-13
不吉な数とされ、この番号は使用されませんでした。
PDP-14
プロセス制御用の12ビットマシンで、後のバージョンはPDP-8の製造技術が応用されました。
PDP-15
DEC最後の18ビットマシンで、TTL集積回路を使って製造された唯一の18ビットマシンです。
PDP-16
レジスタ・トランスファ・モジュールを使った半組み立て式のコンピュータで、PDP-14よりも高機能な産業機械制御向けマシンです。

PDPシリーズに影響を与えたコンピュータ

TX-0
MITリンカーン研究所で開発され、PDP-1を含むDEC製品に大きな影響を与えました。
LINC (Laboratory Instrument Computer)
MITリンカーン研究所で設計され、一部はDECが製造しました。PDPファミリではありませんが、PDP-12の基礎となりました。LINCとPDP-8は、世界初のミニコンピュータ、またはパーソナルコンピュータと見なされることもあります。

PDPシリーズのクローン

SM EVM シリーズ (ソ連)
ソ連で製造されたコンピュータで、多くがPDP-11やVAXのクローンです。
DVK パーソナルコンピュータ (ソ連)
1970年代にソ連で開発されたPDP-11のクローンです。
Electronika 60 (ソ連)
ソ連で開発されたPDP-11のクローンで、テトリスが最初に開発されたコンピュータとしても知られています。
エレクトロニカBKシリーズ (ソ連)
LSI-11クローンをCPUに採用したホームコンピュータです。
UKNC (ソ連)
PDP-11互換のソ連製教育用コンピュータです。

まとめ

PDPシリーズは、ミニコンピュータという新たな市場を開拓し、その後のコンピュータ技術の発展に大きな影響を与えたシリーズです。初期のハッカー文化、UNIXの開発、コンピュータゲームの黎明期など、様々な分野で重要な役割を果たしました。多様なモデルが存在し、それぞれのモデルが独自の歴史と特徴を持っている点もPDPシリーズの魅力の一つです。

関連情報

参考文献
C. Gordon Bell, J. Craig Mudge, John E. McNamara, Computer Engineering: A DEC View of Hardware Systems Design (Digital, 1978)
The Computer Museum Report, Volume 8, TX-0 alumni reunion, Spring 1984, Ed Thelen Web site (accessed June 18, 2006)
Bell, C.G., Grason, J., and Newell, A., Designing Computers and Digital Systems. Digital Press, Maynard, Mass., 1972.

関連項目
PDP-1, PDP-6, PDP-7, PDP-8, PDP-10, PDP-11, PDP-12

外部リンク
Several PDP and LAB's, still runnable in a German computer museum
DEC's PDP-6 was the worlds first commercial time-sharing system スミソニアンでの Gordon Bell のインタビュー
DEC PRODUCT TIMELINE
Description and Use of Register Transfer Modules on Gordon Bell's site at Microsoft
Digital Equipment Corporation PDP-7 マニュアルも含めた各種情報。
* Preliminary Specifications: Programmed Data Processor Model Three - プロジェクト・グーテンベルク

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