PENTAXの銀塩一眼レフカメラ製品一覧:中判・110フィルム用

旭光学工業（現リコーイメージング）製、135フィルム以外の銀塩一眼レフカメラ

この項では、旭光学工業（現リコーイメージング）がかつて製造・販売していた銀塩一眼レフカメラのうち、135フィルム（35mmフィルム）以外のフィルムを使用するモデル、具体的には中判カメラと110フィルムカメラに焦点を当てて解説します。

ペンタックス67シリーズ

ペンタックス67シリーズは、6x7cm判という大判フォーマットを採用した、旭光学初の本格的な中判一眼レフカメラです。当時の社長、松本三郎氏の「大判一眼レフが欲しい」という言葉が開発のきっかけとなりました。当初は製品化を想定していなかったものの、市場のニーズを確信し、製品化に至りました。135フィルムを使用するアサヒペンタックスシリーズとは異なり、より高度な撮影を求めるプロフェッショナルやハイアマチュアをターゲットとしたシリーズです。その愛称は「バケペン」として親しまれています。

特徴的なのは、35mm一眼レフカメラをそのまま拡大したような外観です。6x7cm判という大きなフォーマットでありながら、比較的小型で扱いやすく、手持ち撮影を考慮した設計がなされています。開発時の最大の課題は、大型のシャッターとミラー機構でした。耐久性と耐衝撃性を確保するために、ミラーにはスイングバック式とクランク駆動式が採用されています。マウントは、焦点距離に応じて内爪と外爪を使い分ける、専用の二重バヨネット式ペンタックス67レンズマウントを採用。また、電子制御シャッターやTTL露出計内蔵ファインダーなどの最新技術も搭載されました。フィルム装填は、一般的な中判カメラのようなフィルムバックではなく、35mmカメラと同様の直接装填方式を採用しており、途中交換はできません。中判ならではの高解像度と優れた機動性、信頼性から、風景写真や鉄道写真の分野で多くのプロ写真家から支持を得ました。荒木経惟氏、佐内正史氏、今森光彦氏など、著名な写真家にも愛用されています。

2009年10月、ペンタックス67IIの生産終了に伴い、シリーズはその歴史に幕を閉じました。

主なモデル

アサヒペンタックス6×7（1969年7月発売）/ペンタックス67（1989年11月改名）：30年にわたるロングセラーモデル。ユーザーの要望を取り入れ、ミラーアップ機構、軽量化、バヨネットロック機構など、数々の改良が施されました。露出計なしのアイレベルファインダーやTTL露出計内蔵ファインダーなど、アクセサリーも豊富です。ブランド名変更に伴い、カメラ名称とロゴが変更されました。
ペンタックス67II（1998年11月発売）：絞り優先AEを初搭載。測光機能は6分割評価測光、中央重点測光、スポット測光の選択が可能になりました。TTLストロボ機能に対応するシンクロソケットも搭載。

ペンタックス645シリーズ

ペンタックス645シリーズは、ペンタックス67に続く中判一眼レフカメラの第二弾で、6x4.5cm判フォーマットを採用しています。「スーパーフィールドカメラ」というコンセプトで開発され、当初からワインダーを内蔵しています。フィルムバックは、横長のフレームに適した縦型フィルムバック（途中交換不可）式を採用。ウエストレベルファインダーは採用せず、アイレベルファインダー固定式となっています。ホールディング性を重視したグリップを備え、6x4.5cm判でありながら、他社の35mmフラッグシップ機と遜色ないサイズとなっています。

このシリーズでは、多数のレンズがラインナップされ、機動性の高さから、主に風景写真で支持を得ました。ペンタックスの銀塩一眼レフカメラの中では最も新しいシリーズであり、初期からマルチモード対応の電子接点付きマウントを採用。そのため、交換レンズ群はマルチモード対応となり、645Nの登場と同時にオートフォーカスレンズも登場しました。ペンタックス67シリーズ用のレンズも、専用アダプターを介して装着可能で、開放測光と絞り優先AEが利用できます。最終機種である645NIIは、67IIと同様に2009年10月に生産を終了しましたが、マウントに互換性のあるデジタル一眼レフカメラ、ペンタックス645Dが発売されたことから、一部のレンズやアクセサリーは現在も製造・販売されています。

主なモデル

ペンタックス645（1984年6月発売）：最高シャッター速度1/1000秒、1.5コマ/秒の連続撮影が可能。操作系は35mm一眼レフのスーパーAに近く、シャッター速度は電子ボタンで設定。TTLストロボシステムに対応しますが、露出補正やAEロックは搭載されていませんでした。
ペンタックス645N（1997年12月発売）：世界初の6x4.5cm判レンズ交換式一眼レフカメラとしてオートフォーカス機能を搭載。測距点は3点。2コマ/秒の連続撮影、撮影データの写し込み機能も備えています。新たに645AFマウントを採用。操作系はMZシリーズに近く、シャッター速度はダイヤルで設定します。1997年度のカメラグランプリを受賞。
ペンタックス645NII（2001年10月発売）：645Nの改良版。ミラーアップ機構やカスタマイズ機能である「ペンタックス・ファンクション」を追加。撮影データ項目を充実させ、より使いやすくなりました。外部レリーズソケットの規格をMZ-Sと同様のものに変更し、アクセサリーの共用が可能になりました。

ペンタックスオート110シリーズ

オート110シリーズは、110フィルムを使用する一眼レフカメラで、110規格の製品としては世界で唯一のレンズ交換式かつ一眼レフカメラであり、世界最小の一眼レフカメラとしても知られています。専用のバヨネットマウントを採用し、18mmから70mmまでの5種類の単焦点レンズと20-40mmズームレンズが用意されました。レンズはすべて開放F2.8に統一。小型化のため、レンズ側に絞り連動機構はなく、絞り制御は本体側の電子制御ビハインドレンズシャッターで行います。露出制御はプログラム式AEのみですが、専用のストロボ、ワインダー、クローズアップレンズなどのアクセサリーも用意されており、コンパクトながら本格的なシステムカメラとして構成されていました。

主なモデル

オート110（1979年3月発売）：世界初の110フィルム使用のレンズ交換式一眼レフカメラで、世界最小の一眼レフカメラ。ブラックとマロンの2色のボディカラーが販売されたほか、店頭展示用のスケルトンモデルも存在します。
オート110スーパー（1983年3月発売）：セルフタイマーと逆光補正ボタンを追加。小刻み巻き上げが可能になるなど、機能が向上しましたが、110フィルムカメラの衰退期に発売されたため、あまり流通していません。

まとめ

以上が、旭光学工業（現リコーイメージング）が製造した135フィルム以外のフィルムを使用する銀塩一眼レフカメラの概要です。これらのカメラは、それぞれ異なるフォーマットとコンセプトを持ちながら、ペンタックスの高度な技術力と革新性を体現しています。

関連情報

PENTAX：ペンタックス公式サイト
PENTAXのカメラ製品一覧
PENTAXの写真レンズ製品一覧
PENTAXのデジタルカメラ製品一覧
一眼レフカメラ
中判カメラ
レンズマウント
写真レンズ
写真フィルム
デジタルカメラ

参考図書

中村文夫 『使うペンタックス』 クラシックカメラ-MiniBook第10巻、高沢賢治・當麻妙（良心堂）編、双葉社、2001年5月1日、ISBN 4-575-29229-X
那和秀峻 『名機を訪ねて-戦後国産カメラ秘話』 日本カメラ社、2003年11月25日、ISBN 4-8179-0011-3
『アサヒカメラニューフェース診断室-ペンタックスの軌跡』 アサヒカメラ編集部、朝日新聞社、2000年12月1日、ISBN 4-02-272140-5
『往年のペンタックスカメラ図鑑』 マニュアルカメラ編集部、枻文庫、2004年2月20日、ISBN 4-7779-0019-3
『ペンタックスのすべて』 エイムック456-マニュアルカメラシリーズ10、枻出版社、2002年1月30日、ISBN 4-87099-580-8

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