PHスタジオ

PHスタジオは、美術家、写真家、建築家によって構成されるユニークなユニットです。彼らの活動の中心には、常に「都市に棲む」というテーマが存在します。都市空間における人々の生活や行動、そして都市そのものの構造を深く観察し、美術と建築という二つの分野を融合させながら、独自の視点から作品を生み出してきました。

1984年、美術家である川俣正氏の初期プロジェクトを支えたアシスタントメンバーたちが独立し、PHスタジオは誕生しました。同年、彼らは東京のヒルサイドギャラリーにて開催された個展「家具φ展」でデビューを果たします。この展覧会を皮切りに、PHスタジオは家具製作、住宅設計、ランドスケープデザイン、そしてアートプロジェクトなど、多岐にわたる分野で活動を展開していきます。メンバーは、池田修、中川達彦、細淵太麻紀、小杉浩久の4名です。

PHスタジオの作品は、既存の概念にとらわれない自由な発想が特徴的です。彼らは、都市の日常風景の中に潜む面白さや不思議さを捉え、それを作品として具現化してきました。例えば、1985年の「ダンボール合戦 in 原宿」では、原宿の街を舞台にダンボールを使った大規模なインスタレーションを展開しました。また、「ネガアーキテクチャープロジェクト」では、既存の建築物をネガフィルムのように反転させることで、新たな視点から都市空間を捉え直す試みに挑戦しました。1992年には、世田谷[[美術館]]にて「ホームレスハウスプロジェクト」を実施。現代社会における住宅問題に、アートの視点から問いを投げかけました。

1994年には、ファーレ立川にて連結送水管カバーを制作。機能的なインフラ設備をアート作品へと昇華させる試みは、彼らの活動を象徴するものです。同じ年には、オオタファインアーツを舞台に、猫の抜け道をテーマにしたインスタレーション「えびす」を発表。都市の隙間に潜む猫の存在に着目し、都市と生物の関係性について考察を深めました。1994年と1996年には、広島にて「船をつくる話～灰塚アースワークプロジェクト」を実施。土木作業を通じて、土地と人の関わりを再考する試みは、彼らの活動の幅広さを示しています。1995年には、大宮にて開催された「ゆう・もあ・あーと大宮 風の通り道展」に参加。風という目に見えない存在をテーマに、空間を意識した作品を展開しました。1996年には東京ビッグサイトにて、「オン・キャンプ／オフ・キャンプ」というイベントに参加。キャンプという一時的な生活空間を通じて、都市生活のあり方を問い直しました。1997年には、北九州ビエンナーレに参加するとともに、再び「えびす市場」にて猫の抜け道をテーマとした作品を発表。その後も、2000年には越後妻有アートトリエンナーレにて「河岸段丘 - ノジュール」を発表し、2002年には神戸市立自然の家にて「森のレストラン『ファーブル』」を発表するなど、精力的な活動を続けています。

PHスタジオは、都市空間を舞台に、既存の価値観を揺さぶり、新たな視点を提示する活動を行ってきました。彼らの作品は、都市に生きる人々にとって、自分たちが暮らす環境を再考するきっかけとなるでしょう。

関連文献として、『PH STUDIO 1984-2002』（現代企画室、2003年）があり、彼らの初期からの活動を詳細に知ることができます。

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